■ 「連隊災害対処訓練」で、世田谷区内の監視と保坂区長への要請を行う

駒沢公園に停車する自衛隊車両
駒沢公園に停車する自衛隊車両

「連隊災害対処訓練」で、世田谷区内の監視と保坂区長への要請を行なう
           

             根本善之(世田谷地区労事務局長)

 

「連隊災害対処訓練」は、自衛隊の治安出動訓練だ

 

 7月初め、迷彩服の陸上自衛隊員が7月16日~17日に首都直下型地震発生時の対処訓練として東京23区の区役所に宿泊―「宿営地化」するとの情報が入ってきた。
 陸自第一普通科連隊の説明資料によれば、「平成24年度連隊災害対処訓練(23区展開訓練)」は次の通り。
 「車輌での被害地域への進出が困難な状況を想定し、徒歩による部隊展開等を検証し、運用の実効性の向上を図る訓練で、7月16日午後7時~17日正午、東京23区全域で実施する」「3人・7組の徒歩、2台・2組のオートバイによる地上偵察の派遣、各区2人の連絡員の派遣、市ヶ谷と三宿の駐屯地、目黒区役所の三中継所へ2人の派遣、駒沢公園など都立公園、清掃工場など、13活動拠点への各中隊先遣小隊8人~43人の派遣など、約300人が参加する」「23区展開訓練内容は、各部隊とも連隊本部、練馬駐屯地、各中隊との携帯無線を確保しつつ、被害状況、情報収集活動を実施しながら前進する」「各区役所に到着した部隊は、区役所のニーズ等を現地通信で連隊本部に報告する。17日、午前、東京地方協力本部と現地通信を実施する。3中継所への別途車輌無線機搭載の中継車を派遣し、17日、午前7時、無線中継所を開設、各中隊との通信を確保する。都立公園、清掃工場の活動拠点に到着した各中隊は、被害状況を偵察するとともに、中隊指揮所を開設し、中隊内の通信を確保する」。
 「練馬、板橋、文京、葛飾、荒川、足立、台東の7区役所に宿泊するものの、世田谷区役所への連絡員の派遣は宿泊せず、到着後一旦車で帰駐し、翌朝庁舎内で通信訓練を行なう」ことが明らかになった。
 地域市民運動の仲間とともに「自衛隊23区展開訓練世田谷区内活動」の監視、世田谷区長への要請等を行なった。
 災害派遣で世田谷区を担当するのは第一普通科連隊重迫撃砲中隊。その28人が都立駒沢公園に派遣され、中隊指揮所を開設、同中隊が担当する渋谷区、目黒区との通信も確保するという。

 

駒沢公園で監視行動

 

 その部隊と訓練を監視すべく、16日深夜11時過ぎに駒沢公園に。公園管理事務所駐車場には、すでに陸自赤十字マークの搬送車、ジープの2台が停車。同管理事務所ガードマンに部隊の宿泊訓練場所の確認をするとともにジープの隊員に部隊到着の時間を問うと「17日午前2時頃になる」ことがわかった。
 私たちは直ちに同部隊の動きを確認すべく、経路である環状七号線を車で北上した。杉並区から甲州街道を横切り、世田谷区に入り、羽根木一丁目付近を前進している一隊と同行するジープを発見した。
 一、二班と思われる18人、80メートル位離れて三班10人の28人が歩道左側を一列縦隊で行進してくる。防災訓練と書かれたステッカーを横に貼ったヘルメットをかぶり、迷彩服、戦闘用ブーツをはき、背のうを背負っての行進。各小隊の最前列は交通誘導棒を持ち、最後尾は携帯無線機を背負い、その前の隊員は赤十字の腕章を装着していることが確認できた。
 小銃などの武器は携行していなかったものの行進を目撃した住民、歩行者が「何事か?」とビックリしている。ガソリンスタンドの明かりで写真を撮り、休憩地点の駒留公園に行く。公園横にジープが停車、すでに休憩に入っていた別部隊が10人、隊列を組み、目黒方向へ向っていく。ほどなく先ほどの中隊28人が到着、公園の奥に入り、背のうを下ろし休憩したのを見届けて帰宅した。

世田谷区内を行進する自衛隊員
世田谷区内を行進する自衛隊員

世田谷区役所に要請行動

 

 翌17日、8時前に世田谷区役所に集合。自衛隊車輌を探したが不明。区役所をみてまわったうえで、災害対策課に問い合わせたところ、午前7時前に区役所に入り、訓練の準備を始めているとのこと。8時半以降の訓練の立会いを要望したが、拒否される。
 8時20分、保坂世田谷区長あての「自衛隊連隊災害対処訓練(23区展開訓練)に関する要請」を区長室秘書課長に提出。状況の説明と要請趣旨を区長に伝えるよう要請。また、担当所管でもある危機管理室長、災害対策課長にも要請。要請行動で明らかになった点は、①4月開催の23区防災課長会議で自衛隊から防災訓練を行なうことを聞いていた。9月実施と思っていた。②日程詳細が明らかになったのは6月28日の課長会議。「平成24年度自衛隊統合防災演習(指揮所演習)について」という統合幕僚部のお知らせが配布される。③その時点で区長、区会議に報告した④区民への広報が遅れたのは時間がなかったからである。⑤詳細が確定し、自衛隊と調整し、区のホームページに掲載できたのが7月12日である。「自衛隊による災害対処訓練が行なわれます」という内容で。⑥世田谷区役所での宿泊しての訓練中止は、区の要請ではなく、自衛隊自らの変更によるもの。⑦区内での公園、道路上の訓練は、区として「中止を求める」類のものではない。⑧区役所内での自衛隊の携帯無線機による通信訓練は「世田谷区防災会議」の下に、数年前から毎年実施している。⑨通信訓練の場所は危機管理室内の奥の狭い会議室、もしくは第一庁舎屋上で行なっているということであった。
 私たちは、かねてから「防災訓練」への軍隊である自衛隊の参加に反対し、世田谷区に申し入れ・要請をしてきた。
 自衛隊の災害出動は関係自治体の要請が必要なのだが、今回の「災害対処訓練」は自衛隊の判断によるもの。東京23区全域の23区役所・中継地・活動拠点に、300人もの大規模な部隊が一斉に進出、情報収集、伝達訓練をするなどの展開は過去にも例がない。7区だけとはいえ、区役所に宿泊しての訓練は、区役所へ自衛隊本体を誘導し、区役所を「宿営地化」し、区役所という地域の統治機構を制圧していくためのシナリオに他ならない。
 また今回の「災害対処訓練」は、そのまま治安出動・「大規模テロ対策」など、緊急事態対処の部隊進出に即時転用できるものである。「災害対処訓練(23区展開訓練)」は首都東京の治安出動に向けた名目でしかない。
 さらに、「東日本大震災救援」など、自衛隊活動への認知や期待が高まっている今だからこそ「災害対処訓練」などで活動の実績をつくり、迷彩服で市街地を、区役所を動き回る自衛隊を市民らに慣れさせるとともに、自衛隊活動に〝市民権〟を与えていくものだ!