鈴コン闘争にかける想い

鈴コン闘争にかける想い                
 

                  鈴木コンクリート工業分会闘争支援・連帯共闘会議 
                  呼びかけ人代表  花輪 不二男(世田谷地区労顧問)

 

私たち労働者は奴隷ではない

 

 鈴木コンクリート工業は、板橋区舟渡に工場を持つ生コン製造、運送の営業を行なうミキサー車中心の中小規模の会社です。鈴木社長は、信じられない程に反動的な人です。従業員は数人の社員以外、20数人全員が3ヵ月雇用のアルバイトで運転手として働かされています。
 鈴木コンクリート工業の中には東豊商事と言うダミー会社があり、役員は鈴木親子が独占しています。そして、雇用は東豊商事、仕事は鈴木コンクリート工業の形で運転手を二重の管理体制の下で監視し、不満分子を使い捨ててきました。今回「雇い止め解雇」となった分会三役は永い人で22年、短い人でも8年~10年の継続雇用期間がありました。これは明らかな「労働組合つぶし」の解雇権乱用であり、当然にも争議状況となりました。
 東京地裁・光本洋裁判長は労働組合の「解雇予告効力停止仮処分申立」に対し本年2月、「1年間の賃金仮払い決定」を下しました。会社側はその後に異議を申し立てましたが、裁判所は会社の申し立てを退けました。その理由は組合が解雇の不当性を会社の門前や駅頭で訴えた行為は、通常の組合活動を逸脱したものではない事、そして、三役の雇用実態は事実上「雇用期限の定めのない労働者」であるというものです。この裁判所の決定は、鈴コン社内で日常的に繰り返されている労務管理が世間では通用しない非常識である事を改めて証明する形になりました。
 しかし、会社はその後も一切解決する気持ちが無く、団交も拒否し今なお対決姿勢を崩していません。労働組合は会社の不当労働行為などを東京都労働委員会に提訴し、審問が続けられています。
 振り返れば鈴木コンクリート工業の闘いは2009年夏の労働組合結成と共に始まりました。先ず、組合結成の中心であった田口さんに会社は「60歳定年解雇をとるか、継続雇用を賃下げ(25%)があっても希望するのか」を迫りました。元々、鈴コンの運転手は3ヵ月のアルバイトで、60歳定年の就業規則はありませんでした。鈴木社長もそれを認め、最初の攻撃は不発で終わりました。しかし、労働組合を敵視する会社は11月、撤回したはずの田口氏60歳定年解雇を強行した他、一部の分会役員を抱き込み、組合破壊工作を仕掛けました。この攻撃に耐えた6人の組合員は分会の旗を守りとおし、会社の組合解散攻撃は失敗しました。
 田口さんは組合結成の2年後に急逝されましたが、組合はあくまで「田口解雇の撤回と名誉回復」を求めると共に、手当て(8000円)の一方的なカットの撤回を要求して闘いました。
 9月27日、スト決行。会社は違法ストと主張し、分会三役に1週間の出勤停止処分、更に組合の抗議行動に「雇い止め解雇」を乱発しました。
 私が鈴コン闘争支援・連帯共闘の呼びかけ人代表を引き受けたのは、鈴木親子の人権無視と反動的な労務管理に怒りを感じたからです。
 鈴木社長が良く使う「イヤなら辞めれば……」の発言は解雇予告であり、運転手への恫喝です。雇用関係をダミーの東豊商事に移したことで鈴木親子が勝手気ままに「雇い止め解雇」を使い、汚い職場支配を続けて来たことを考えると一層、腹立たしくなります。
 10年、20年と職場を支えて働いた労働者を「虫ケラ」のように解雇する鈴コンは許せないと思いました。過去の一度は結成された労働組合を刑事弾圧を絡めて壊滅に追い込んだ会社だけに悪さには長けているのでしょうが、何時までも労働者の「使い捨て」を続けられるわけはありません。
 私たち労働者は奴隷ではないのです。

 

この闘いは世直しの初戦

 

 鈴木コンクリート工業が良識を取り戻し、労使関係を敵対から相互理解に改めれば、労働者は生きがいを感じて労働に励むのです。特に現在は震災からの復興や耐震構造への転換など、業界は遊んでいられない時代ではないですか。今は業界を含め地域社会に貢献する事業として発想の転換が求められる時代だと思っています。
 過去の高度経済成長期に資本家たちは「パイを大きくすれば、やがて分配も多くなり、社会全体も豊かになる」と説明してきました。そして、経済は市場原理に任せろと主張し、政府はできるだけ小さくする方が良いとも言いました。しかし、“リーマン・ショック”以後に資本家たちは膨大な国家財政の支援を求め、今やその国家財政も危機的状態に陥っています。
 私たちはこれらの過程で蔓延した社会問題を捕らえ直す必要があります。進行する格差社会の下で人件費削減、サービス残業、下請け孫請け外注化、「非正規雇用」の常態化、企業の海外流失などが起きていました。この多くは新自由主義市場原理によるもので、徹底した競争原理、金儲け主義のもたらしたものでした。
 私たちは東証一部の大手企業が「出口が見えない不況下」でも、不採算部門を切り捨てたり、下請けや労働者に犠牲を転化して得ていた利益を、史上空前の利益と誇らしげに決算報告したのを知っています。今や富は偏在し、格差社会は広がりました。そして、更なる利益を求める大資本家は国家財政まで食いつぶし、地球規模で財政破綻に追い込まれる国々が生まれるなど、大変な時代を迎えました。現状は私のような素人ですら危機感を強く感じるのです。
 鈴木コンクリート工業は、何処の町にもある中小企業で巨万の富を左右できる会社ではありません。しかし、労務政策は最悪の会社です。今や官民を合わせ40%を超えた「非正規」労働者が起ち上がるためには、最悪の労務管理を強いている鈴コンの闘いで先ず勝利し、苦しんでいる「非正規」や派遣労働者に「闘えば勝てる」勇気と確信を与え、決起を促して行きたいと思うのです。
 鈴コン共闘が訴えている「ナショナルセンターの枠」を越える組織化の意味は、産別も地域も越えて広がった「非正規」労働者の無権利状態を食い止めるために現時点で枠はむしろ無いほうが闘い易いと考えているからです。
 例え小さな職場の闘いであっても、労働の現場で「正規」「非正規」の労働者が手をつないで起ち上がる共闘体制ができるようになれば、そして近隣の職場の労働者が「正規」「非正規」を問わず連帯することになれば、資本による労働者の分断支配は阻まれ、新しい労働運動の流れや労働者の命と暮らしに光を当てる政策が必ずや生まれるものと期待しています。本来、労働者側には「正規」も「非正規」もありませんでした。この巧妙な差別と分断を持ち込んだのは資本の側で、使い勝手のよい労働力を担保し、リスクへの安全弁として「労働者の使い捨て」を考えたのが「非正規」や派遣などの形になったと思うのです。既に社会問題化しているこれらの弊害を私たちは見逃してはならないと考えます。 私も年齢的に先は短くなりました。しかし、鈴コンの闘いを夢で終わらせたくないのです。現在は当該の解雇された三役と懸命にオルグで飛び回っています。そして、私も解雇三役の皆さんも、求められれば何処にでも訴えに行きます。また、求められなくてもお訪ねすることもあるでしょう。
 どうか、鈴木コンクリート工業の闘いの勝利を、更に「非正規」労働者の闘いの勝利を掴ませて下さい。この闘いを世直しの初戦と受け止め、連帯して下さるよう心からお願いいたします。