10.24  七〇人の結集で、対労働局行動に取り組む

10.24  七〇人の結集で、対労働局行動に取り組む

 

         福岡・築港日雇労働組合

 

「ホームレスの実態に関する全国調査結果」を材料に労働局を追及

 

 10月24日、福岡・築港日雇労働組合(福日労)は、70人の日雇い・野宿の労働者の結集で、福岡労働局との交渉を軸とする対労働局行動に取り組んだ。福日労は今年8月、団結夏祭りに際して「仕事よこせ」の市内デモを行ない、労働局に対して要求書を提出していた。要求書の内容は、日雇い・野宿の労働者のための公的就労対策事業を起こすよう求めるものである。今回の交渉は、この要求書に対して、労働局が回答する場として設定されたものである。
 午前10時30分、労働局が入る合同庁舎前の中比恵公園に、多くの日雇い・野宿の仲間たちが結集する。組合旗のもとに集まった労働者たちに、福日労の仲間が要求書を読み上げて、その内容を全体であらためて確認する。次はシュプレヒコールだ。「労働局は、失業の責任をとれ」「日雇い・野宿の労働者に仕事を出せ」「公的就労対策事業を行なえ」という労働者たちの声が合同庁舎を揺るがす。公園の内外を行き来する人たちが熱い注目を寄せる。11時が近づくと、全体の熱い拍手で交渉団を送り出す。
 交渉は、庁舎内で約1時間にわたって行なわれた。労働局からは、総務部の企画室、労働保険徴収課、職業安定部の職業安定課、職業対策課、求職者支援室などが出席した。さっそく要求書への回答を聞く。職業対策課の担当者いわく、「民間企業における雇用の安定や雇用の拡充・発展を促進する」「失業対策事業のような、国が主体となって事業を起こす方式は採らない」という、これまでと相も変わらぬ空疎な内容だ。
 さっそく交渉団が追及する。追及の材料は、厚生労働省自身が今年1月に聞き取り調査をし、4月27日に発表した「ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)結果について」という資料だ。

 

「日雇い・野宿の労働者に特化した就労対策を講じるべきだ」

 

 この資料によれば、仕事がない野宿労働者は36・9パーセントで、5年前より10ポイントも増えた。しかも、野宿労働者の平均月収は約4000円で、5年前の調査時の実に10分の1にまで激減している。「この窮状をどう考えるのか」という追及に労働局の役人どもは言葉がない。
 さらに、この資料によれば、調査対象の1300人の野宿の仲間の年齢は、55歳から69歳が全体の60・6パーセント、平均が59・3歳と、かなりの高齢の仲間が多くを占めている。野宿をする前に、最も長く従事した仕事は、「建設・採掘従事者」が40・2パーセントと最も多く、その多くは、長年にわたって炭鉱で、あるいは建築現場などで汗を流してきた仲間たちだということが分かる。しかも、最終学歴は「中学校」が50・0パーセントと最も多く、次いで「高校」が38・2パーセント、「大学」と回答した者はわずか5・28パーセントにすぎない。これらの事実が示していることは、生活保護の「生業扶助」や各種の「雇用対策基金事業」に基づく「パソコン」「簿記」などの「職業訓練プログラム」が、日雇い・野宿の労働者にとっては、まるで手の届かないものであるということだ。この資料自体が、日雇い・野宿の労働者に見合った対策を行なうしかないという結論を鮮明に示しているのだ。交渉団は、「国や自治体は、これらのプログラムを利用して就業しろと迫るが、日雇い・野宿の労働者にとってそれは、届かないロープに向かって飛べと言われているようなものだ」「日雇い・野宿の労働者に特化した就労対策を講じるべきだ」と厳しく追及した。

 

日雇い・野宿の労働者のための公的就労対策事業を要求

 

 この資料の何よりの注目点・問題点は、「求職活動をしていない人」に対する設問で、「今の仕事で満足しているから」という人を除いた、「疾病、障害、病弱、高齢で働けないから」、「自分の希望する職業を探してもないと思うから」、「就職の際の身元保証人がいないと難しいと思うから」「住居がないと採用されないと思うから」と回答した人のうち、「生活リズムをつくるための軽作業を勧められたら参加するか」という問いに対して、実に461人(64・3パーセント)の人が「はい」と回答していることである。この設問にある「軽作業」は、福日労が要求している公的就労対策事業にも通じるものだ。交渉団は「福日労が夏に行なったアンケート調査でも約9割の仲間が仕事を望んでいる。病気や高齢の人を含めて、多くが自分のできる仕事を求めている。しかし仕事がない。これが現状だ。厚生労働省もそれを認めているではないか」と追及した。さらに、「ここに言う『軽作業』について、厚生労働省は何らかの用意があって質問をしたのか」という追及に対しては、「担当が違うので分かりません」と逃げを打つばかりだ。交渉団からは、「『お茶はどうですか』と聞いておいて、客が『はい、いただきます』と答えたら、『うちにお茶の用意はありません。ただ聞いてみただけです』というようなものだ」「絵に描いたモチだ。食えないじゃないか」「そんな無責任な質問があるのか」という強い怒りの声があがった。交渉団の追及に役人どもは声を発することもできなくなり、「今日の話は必ず、本省にも、県や市にも伝えます」と答えるのがやっとであった。
 正午を過ぎて交渉団が戻ると、さっそく報告集会だ。拍手で迎えられた交渉団から、具体的な経過と内容が報告され、国の無策の現状が暴露される。全員の怒りをシュプレヒコールで叩きつけていく。その後、全体は、福日労が用意したカレーライスで昼食をとり、最後に、「失対事業方式は採らない」という国の壁をぶち破って仕事をかちとるために、これからも「仕事よこせ」の闘いを粘り強くやりぬいていくことを確認して、解散した。