9・5、9・6、9・10「君が代」処分取り消し裁判で「10・23通達」を是認する最高裁判決

9・5、9・6、9・10「一〇・二三通達」を是認する
「君が代」処分取り消し裁判最高裁判決

 

 9月5日から10日にかけて、東京都の「君が代」強制をめぐって争われてきた処分取り消し請求に対して最高裁判決が相次いだ。いずれの裁判においても最高裁判決は、東京都教育委員会が発出した、2003年の「10・23通達」とそれに基づく「職務命令」自体を「合憲」とし、被処分の原告・教育労働者らの請求を退けるものとなっている。
 9月5日には、「累積加重処分取消裁判」、「東京小中学校『君が代』裁判」の(いずれも最高裁・第一小法廷)、9月6日には、「東京『君が代』二次訴訟」、「米山裁判」(いずれも第二小法廷)、9月10日には、「都障労組『君が代』裁判」(第三小法廷)の判決が、それぞれ言い渡された。どの判決言い渡し日にも、開廷前から原告・支援者らが最高裁南門に集い、裁判傍聴席をほぼ満席に埋め尽し、最高裁法廷内外で不当判決を弾劾する闘いが展開された。
 すでに、2012年1・16最高裁判決において、都教委の処分に関して「戒告」を越える「減給」・「停職」の処分に関してだけは取り消しを命じるとの判断を示している。今回の各判決も、基本的には「1・16判決」を踏襲したものとなっている。そもそも、都教委の「日の丸」「君が代」強制は、長年現場での強制反対の闘いに対して、処分を打ち下ろして弾圧を加え、闘争を根絶やしにしていくものである。しかし、最高裁判決は、教育行政権力の教育への不当な介入そのものを正面から見据えることなく、司法の立場から追認していくものでしかない。せいぜい処分の軽重をめぐって都教委の「裁量権」についての一部を逸脱とみなして取り消しを命じたものでしかないのである。
 これが教育行政に対しては何らの「歯止め」の役割も果たさなかったことは、その後の行政の介入のエスカレートする攻撃によって明らかだ。大阪においては、橋下徹が率いる「維新の会」が主導して「君が代」強制と処分を謳った条例が制定され、実際に処分攻撃もかけられた。東京でも、2012年度卒業式以後も「不起立者」に対しては処分と「再発防止研修」が乱発されてきたし、複数回の「不起立」に対しては、「戒告」を越えての「減給」処分すら強行されているのである。
 こうした一連の事態に対して、現場での闘いとそれを支援する労働者人民の闘いは継続して取り組まれてきた。各判決日でも最高裁の各小法廷は、それぞれ裁判をめぐって厖大な証拠を積み重ね法廷闘争を闘いぬいてきた原告らの追及が展開されてきた。しかし、最高裁が用意した「判決」は、どれもほぼ同じ内容の紙切れ一枚程度の分量の文書でしかなかった。判決の言い渡しも、「主文」の「上告棄却」を開廷時間がわずか1分にも満たないだけで読み上げて閉廷してしまうという代物でしかなかった。
 こうした最高裁―司法権力に対して、原告ら教育労働者と支援の労働者人民は失望しながらも怒りをこめて最高裁を包囲し弾劾の声をあげ、現場における不起立の闘い、そして都教委への追及の闘いをあらためて決意していったのである。
 東京や神奈川、大阪では、「君が代」強制問題に言及した実教出版の「日本史」教科書の不採用が現場の意向をまったく無視して押しつけられてきている。松江市教委は「はだしのゲン」の閲覧禁止を強行してきた。このように戦争遂行体制づくりのために教育への介入は一層激化してきている。「日の丸」「君が代」強制、アジア侵略と植民地支配を正当化していく攻撃を打ち返していかなければならない。
〈東京・山谷日雇労働組合〉