基調提起
(1)
春闘勝利総決起集会に結集した闘うなかまのみなさん!
安倍や資本家たちが、「アベノミクス効果」をデッチ上げるために2014年春闘を利用し、破壊しようとしている。これを絶対に許してはならない。春闘は賃金や労働条件をめぐった労働者の要求の実現をストライキをはじめとする労働者の実力の闘いで資本にせまる闘いだ。しかし、安倍や資本家たちは「アベノミクスは賃上げも実現する」なぞというペテンを使い、春闘、ひいては日本労働運動そのものを「アベノミクス」のための運動に変質させようとしている。資本家たちは、「大企業正社員クラブ」と揶揄される「労使協調路線」を取る労組の消費税増税分にも満たないわずかな「ベースアップ要求」には容認の姿勢を取っている。「労使協調」へのさらなる取り込みを策しているからだ。一方、圧倒的な未組織労働者や「非正規雇用」労働者に対する賃上げは否定し、使い捨て攻撃をさらに強めようとしている。
「アベノミクス」の目的である「デフレ克服―経済の好循環実現」とは、世界大恐慌の爆発を目前にした資本家たちが資本主義経済の延命を図るための〝展望なき願望〟でしかない。この〝展望なき願望〟に期待して労使一体化し、〝資本主義経済防衛〟の合唱隊になることなぞ、労働運動の死に等しい。そもそも安倍は、一年前の春闘の真っ只中に何をやったのか。地方公務員給与の7・8パーセントもの引き下げ決定ではなかったのか。「賃上げで経済の好循環を実現する」という「アベノミクス」がまやかしであることは、この事実一つをとっても明らかだ。
われわれの先達である中西五州氏は、「資本主義経済は失業と貧乏と戦争を必ずもたらす」「労働者が資本主義体制を作り変えるために闘うことは不可避」ということを労働運動を闘う者は基本に据えきるように訴えられていた。「戦後労働運動の限界の突破」を掲げて闘いを開始した全労交の責任は重大だ。日本労働運動に害悪を及ぼしてきた「労使協調路線」、「本工主義」「企業主義」「国益主義」を突破する闘いを2014年春闘の渦中で実現していかなければならない。
(2)
日本経団連が2014年春闘に対する資本家側の基調として発表した「経労委報告」は、労働者に対する賃下げ、「九割非正規化」、「解雇自由化」、「残業代ゼロ化」の攻撃の宣言に他ならない。
「経労委報告」は、労働基準法の「賃金」規定まで引っ張り出して「年収上昇が賃上げの意味だ」なぞと強調している。これは「月例賃金の引き上げだけが賃上げではない」として「ベースアップ要求」を潰すことを狙い、「月例賃金引上げ」―「ベースアップ」と連動した資本の社会保障費負担の増加から逃れるためだ。資本は社会保障制度そのものの解体さえ狙っている。さらに、「年功給から成果給に転換する企業が増えている」と言い、「仕事、役割、貢献度を基準にした賃金体系に転換しろ」と号令して賃下げを煽動している。
また、「転勤がない、長時間労働がない」と称して、あたかも〝労働者が選ぶ自由な労働〟のごとく描いて「非正規雇用」そのものである「限定正社員」を拡大して「九割非正規化」を完成させようと狙っている。資本家たちはこの「限定正社員」を〝いつでも解雇できる〟雇用形態とし、「正社員」も含めたすべての労働者に「解雇自由化」を拡大する突破口として位置づけている。それは「経労委報告」が「限定正社員について解雇権濫用法理は正社員と同列に扱わない」と言っていることで明らかだ。
さらに、「経労委報告」は「労働時間・深夜労働の規制の適用を除外する制度の創設」を要求している。これは〝労働時間の長さと仕事の成果が比例しない事務職、研究職のため〟と、あたかも〝労働者のため〟のような装いをもって「成果を上げない労働者に残業代なぞ払う必要はない」という「残業代ゼロ化」を狙った攻撃に他ならない。
そして、日本企業が進出するインドネシアでの賃上げ、「正規雇用」、組合結成を要求した百万人のストライキ決起に恐怖と憎悪を募らせて「海外労使紛争を労使一体で未然に防げ」と号令している。
このような労働者に対する悪辣な攻撃を資本家どもはかけようとしている。「経労委報告」に徹底的に対決する闘いを2014年春闘で実現しなければならない。
(3)
安倍が「アベノミクス効果」として必死に宣伝している「円安」や「株高」は一時的な〝資産バブル〟でしかない。「高額商品が売れている」なぞというマスコミの「アベノミクス」翼賛報道に対して、一日一日を必死で生きぬく労働者は怒りをたぎらせている。
安倍が資本家たちと狙っているのは、〝資産バブル〟で資本主義経済の最後的な破綻までの〝時間稼ぎ〟をし、「日本を世界で一番ビジネスがしやすい国にする」と称して、労働者の生活保障や雇用責任、労働時間など資本家にとっての〝規制〟をすべて取り払った〝資本家天国〟、労働者にとっては〝奴隷工場〟を作り出すことだ。
安倍は3月中にも「労働者派遣法」改悪案を国会に上程しようとしている。派遣労働を一時的なものとしてきた法律の根幹をひっくり返し、資本家には派遣労働の永久的な使用を認め、労働者には3年ごとの失業を強制しようとしている。また、「成長戦略」の名の下に国家戦略特区の設置を突破口にした「解雇規制」撤廃、「労働時間規制」撤廃、「無期雇用転換権」の否定をとおした「九割非正規化」の攻撃をかけようとしている。
さらに許せないのは、安倍が「成長戦略」の名の下に、原発の再稼働・新(増)設と原発輸出、武器輸出を強行しようとしていることだ。安倍が作ろうとしている「強い日本」なるものは、「集団的自衛権行使」や原発再稼働で改憲と核武装を強行し、反中国・反北朝鮮―反共・排外主義の煽動と「愛国心」教育で国民統合した戦時国家であり、資本家たちが〝死の商人〟としての延命を図る国にほかならない。われわれは世界の労働者に対する責務としてこれを許してはならない。
(4)
「連合」は、「アベノミクス」推進のための「政労使会議」に安倍や日本経団連とともに参加し、合意文書を取り交わした。「労働者派遣法」などの労働法制を改悪するための「労働政策審議会」で次々と改悪案に同意を繰り返している。資本家たちの「限定正社員」拡大攻撃に対して「すでに企業内で導入が進んでいる以上、何でも反対というわけにはいかない」なぞという「連合」の姿勢は、資本の攻撃に対してそもそも〝闘う〟気がなく、「非正規雇用」労働者を〝踏み台〟として平然としている「本工主義」労働運動の本質を示すものだ。フィリピン・トヨタ労組の闘いに敵対する姿は、「企業主義」の極みであり、「国際競争に勝つための人材への投資」を賃上げの理由としてかかげる姿は「国益主義」そのものである。労働組合が〝投資〟なぞと資本家のごとく口にするなぞもってのほかだ。全労連も、「中央・地方で大企業の社会的責任を問う世論作りを行うことが重要」なぞと言い、資本主義経済防衛を前提とした中小企業経営者と「国民主義」の立場からの主張に終始している。
われわれ全労交は、このように「戦後労働運動」が「労使協調路線」と「本工主義」「企業主義」「国益主義」を満開にしている現状を突破するために闘いを開始した。労働者階級の最底辺からあらゆる産別、雇用形態の労働者と連帯する闘いに執着して闘う寄せ場労働者、「無期限雇用」「直接雇用」の原則を資本に強制するために「非正規争議」を頑強に闘う「非正規雇用」労働者、被曝労働の強制に対する怒りを現場労働者の反原発決起―原発廃止へと拡大するために闘う元原発労働者、処分覚悟で「君が代」不起立に決起する教育労働者。これらの闘いは労働運動の原点をあらためて鮮明にしている。二〇一四年春闘の爆発でこの闘いを5000万労働者へと拡大していかねばならない。
(5)
韓国労働者は大統領・朴槿惠の鉄道民営化・労組破壊攻撃に対してゼネスト決起で反撃している。インドネシア労働者は生活と権利をかちとるために連続的に100万人規模のストライキを闘い、日本の資本家たちを恐怖に落とし込めている。南アフリカのプラチナ鉱山労働者は国家財政の〝デフォルト危機〟を追撃するストライキに起ち上がっている。「デフレ」や「国家財政破綻」に危機感を深めるのは資本家の側に立つ者であり、労働者階級にとっては、搾取と収奪、ブルジョアによる政治的支配を終わらせる好機が到来しているということだ。為すべきは資本と徹底的に対決し、その延命の道を断ち切ることだ。
安倍の戦争政策は、日本労働運動を「産業報国会」型労働運動に転落させることを条件にしていることを肝に銘じ、2014年春闘の爆発を実現しよう。全労交の破壊を狙った国家権力とサントリー資本が一体となった〝レッド・パージ〟攻撃を粉砕しよう。すべての原発廃止―原発労働者の反原発決起の水路を切り拓く闘いをさらに拡大しよう。「非正規」雇用労働者の闘いを牽引してきたパナソニックPDP争議に続く「九割非正規化」攻撃と対決するヤンマーなどの「非正規争議」に勝利しよう。安倍の戦時国家体制形成―戦争動員攻撃と対決する今春の卒・入学式での「君が代」不起立闘争の爆発をかちとろう。「一人の野垂れ死にも許すな」として貫徹した越年・越冬闘争から「生活できる賃金を出せ」「仕事よこせ」をかかげて建設資本、厚生労働省、日本経団連を追及―弾劾する全国寄せ場労働者の春闘集中行動に勝利しよう。この闘いの勝利のなかから「連合」、全労連を突破して闘う日本労働運動の新たな結集軸を建設する事業の前進をかちとろう。