寄稿「自治労運動の現状に想う」

寄稿

自治労運動の現状に想う


自治体労働者 源田新


賃下げと「競争と分断」の強化・拡大


 今年、人事院は民間給与との格差〇・27パーセントアップ、一時金〇・15月分増額とする「7年ぶりのプラス勧告」を行なった。また、同時に、「給与制度の総合的見直し」と称して、「俸給表の水準を平均2パーセント引き下げ、50歳代後半層へは最大4パーセント引き下げ。地域手当の見直し。2015五年1月の昇給を一号俸抑制」すべきと勧告した。これは「プラス勧告」と宣伝しながら実質的には賃金引き下げを行なうことにほかならない。しかも、東京都などのように既に「業績評価制度」の導入がなされている自治体以外へ、全国的に、一斉に「人事評価―業先評価制度の導入を図れ」という、各地方の人事委員会に対する「見本」であった。

 これが実施されれば、査定昇給による「競争と分断」が拡大・強化され、その評価結果が分限事由とされ、「D評価」が連続すれば分限免職にもつながるとんでもないしろものだ。

 これに対して、8月に開催された自治労の第87回定期大会では、昨年の賃金切り下げ攻撃に対決した統一ストライキを上回る産別統一闘争の強化を図るべきところであるにもかかわらず、笑止にも、「プラスの勧告分(だけの)の実現」と、「総合的見直し」攻撃については、「公民比較に基づかない引き下げは実施させない、確定期には妥結せずに、春闘以降の継続協議とすることを基本とする」と方針化した。この「賃下げ」―「競争と分断」による「公務員の人民抑圧の尖兵化」攻撃内容を全く理解せずに「先延ばし方針」を決定したのである。大会では、「そんなの難しい」という悲鳴があがったのは当然である。しかし、統一ストの配置と大規模な産別統一行動を求める意見も無視されて「先送り方針」が決定された。大会後、「都道府県」と各政令指定都市の人事委員会は次々と国の「人事院勧告」並み勧告を行なった。


「人勧体制打破」方針の確立を


 労働者基本権剥奪の代償として設置された人事院・人事委員会が、その責任をかなぐり捨てたことを今次「人勧」が如実に示している。

 今や、政府・自民党、財界の意のままに、「勧告」という名をもって、公務員賃金制度改悪にまい進しているのが「人勧」体制だ。今こそ、「人勧」体制打破のスローガンを高く掲げ、処分を恐れず実力ストライキを打ちぬく公務員賃金闘争を組織し、その一環として労働基本権奪還の展望を切り拓こうではないか。

 昨年11月の閣議決定で公務員給与に関し、「地場賃金の反映」「高齢層職員の給与構造の見直し」「能力・実績のより的確な処遇への反映」などに取り組むことが決定され、これを受けた「地方公務員の給与制度の総合的見直し検討委員会」は今年の「人勧」の後、その「基本的方向性」を発表した。同「基本的方向性」は、「総体としては2006年度以降の給与構造の見直しが、一定の成果を上げてきている」が、まだまだ「年功的な給与制度の見直しが不十分である」としている。また、今年5月に改悪された地方公務員法によって、「人事評価制度」を導入しなければならないことになったのだから「まずは勤務成績を給与等へ適切に反映すること」だと強調している。

 すでに明らかであろう、政府・自民党、財界の狙いは年功序列型賃金体系の一挙的破壊―「競争と分断」の強化・拡大である。


「新たな政治対応方針」の誤り


 先の自治労大会の第2号議案で「新たな政治対応方針」として、民主党を中心に「中道」「リベラル」な政治勢力の結集を図る方針が「民主党への不信」が組合員に拡大しているにもかかわらず、決定された。国家公務員の7・8パーセント賃金カット強行と同様に地方公務員も「痛みを分かち合え」と賃金切り下げ攻撃を叫んだのがこの「中道」「リベラル」勢力ではなかったのか。これに対して自治労は産別統一ストライキを打ちぬいて、ようやく一定の歯止めをかけることができたのではなかったか。

 今また、先の「基本的方向性」は続ける。「地方公務員法の均衡の原則においては、民間給与とともに、国家公務員給与も考慮事項の一つとされていることから、国家公務員給与の見直しがあれば、それを踏まえた当該団体の給与の検討が求められるところである」と。地方分権もあったものではない。そもそも、国家公務員の定数削減・賃金切り下げが民主党の「政権奪取」時の「重要政策」であったし、労働基本権付与と引き換えにという取引で「連合」・自治労はこれを丸呑みしようとしていたではないか。そして、強行された公務員賃金削減には「震災復興」のためというキャンペーンがはられた。ここで多くは語らないが、最近の新聞記事を引用しておく。

 「東京電力は10月31日、今年度第2・四半期の決算を発表した。電気代値上げの収入増、また、原子力損害賠償費として4500億円を特別損失に計上した一方で、特別利益として原子力損害賠償・廃炉等支援機構からの交付金5100億円を計上して、四半期の純損益は2709億円の黒字となったという。増税と値上げ、そして公務員賃金カットが強行された一方、東電はぬくぬくと黒字経営だ」「北海道泊村のデータが、原発立地周辺でのがん多発・死亡率の増加を示しているという。また、原発を稼働させるだけで事故が起こらなくてもトリチウムは海に放出されるので、原発稼働そのものが健康被害の原因になりえるといわれている。震災復興の前提は、すべての原発を廃炉にしなければならないということではないか」。

 われわれの賃金体系要求は明確である。

 一切の差別賃金―職務・職階給廃止、「通し号俸制度」の実現。「高原型(フラット化)賃金カーブ」を許さず、年功序列賃金体系堅持。おのずから、「非正規」職員導入反対―「期限付き限定雇用制度」導入反対である。政府・総資本の総力をかけた公務員制度改悪攻撃を木端微塵に打ち砕こうではないか。