第2部 基調提起と行動提起

    「連合」、全労連を突破して闘う方針を提起する
    「連合」、全労連を突破して闘う方針を提起する

基調・行動提起


全国寄せ場交流会

全労交代表呼びかけ人

鈴木ギャー氏


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 春闘勝利総決起集会に結集した闘うなかまのみなさん!

 〝政府が管理する春闘〟と言うべき状況が、昨年につづいて今年の春闘においても再現されようとしている。春闘開始前の昨年12月に、安倍と日本経団連と「連合」が、「政労使会議」を行ない、「賃上げを合意した」というシナリオを作った。そのシナリオにもとづいて大企業の労働組合が、数字を合わせた要求書を提出している。2月末時点で「連合」が集計した加盟組合の平均要求額は、定期昇給分とベースアップ分の合計で1万887円、合計引上げ率は3・74パーセントとなっている。昨年のベースアップ結果である〇・4パーセント、金額にして1500円を上回れば、「昨年を上回るベースアップが実現した」という最後のセリフまで用意されている。

 だが、労働者に保障された「団結権」「団体交渉権」「争議権」をまったく行使せず、シナリオに沿った大企業「正社員」の「賃上げ」が実現したとしても、それは労働者の賃金闘争の成果ではないとハッキリ宣告してやらねばならない。はじめから「非正規雇用」労働者を排除し、資本に脅威を与えるストライキも打たない〝行事〟を、われわれは「闘い」や「春闘」などとは呼ばない。

 「アベノミクス」に依拠した「官製春闘」によって、労働者はどういう状況に置かれているのか。「非正規雇用」労働者は、増え続け、2000万人を突破した。年収200万円以下で生活する「ワーキング・プア」は、1120万人にのぼっている。家計貯蓄率は、1955年以来初のマイナスとなった。実質賃金が18ヵ月連続で減る中で、貯金を取り崩して生活する労働者が増え続けているのだ。多くの労働者と家族が、食べる物も買えず、子どもの給食費も払えず、病院にもかかれない、まさに窮乏生活を強制されている。われわれは、この日本労働運動の現状を突破するために、本日この場に結集したことを確認しよう。

 われわれは、2015年春闘を「生きていける賃金を払え!」「大幅賃上げを実現しろ!」という要求を掲げた実力の春闘行動として闘わねばならない。それと同時に、安倍と資本家たちが「世界で一番ビジネスがしやすい国にする」と言い、労働者に団結も権利も労働組合もない〝労働監獄〟を強制しようとする攻撃を粉砕する闘いに全力を集中しなければならない。安倍は、「アベノミクス」の先に改憲―戦時国家体制形成を見すえ、原発再稼働や名護新基地建設を強行している。資本家たちも、安倍の戦争突撃に唯一の延命の道を見ている。反戦・反合・政府打倒春闘がわれわれの闘うべき方針であることを確認しよう。


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 1月20日、日本経済を支配する日本経団連が2015年春闘に臨む資本家側の指針となる「経営労働政策委員会報告(経労委報告)」を発表した。マスコミは、「経労委報告」が「ベースアップは、賃金を引き上げる場合の選択肢の一つ」と言っている部分に飛びつき、「ベースアップを容認、賃上げ促進」と報道している。「アベノミクスによる賃上げ」を演出するためだ。だが、「経労委報告」は、「連合」が求める「二パーセント以上のベースアップ」に対してさえ、「実態にそぐわない要求には疑問がある」と言い、出し渋りを貫いている。

 「経労委報告」の本音は何か。それは「生産性を高め、経済の好循環を目指す」というサブタイトルに表れている。このサブタイトルの意味は、「『アベノミクス』の金融政策による円安や株価上昇で大企業の資産面は改善されたが、本業の利益は上がっていない。今後は『生産性向上』で労働者からの搾取を徹底的に強めて利益を追求する」ということだ。

 搾取を極限化するために、「経労委報告」は、安倍政府に対して雇用・労働政策の「規制緩和」を求めている。それが「残業代ゼロ化」のための「労働時間規制の緩和」であり、「正社員」の低賃金化・「解雇自由化」のための「多様な限定正社員の活用」であり、「生涯非正規化」のための「労働者派遣法の見直し」だ。資本家たちは、安倍に「世界で一番ビジネスがしやすい国」、つまり「賃下げ放題」「首切り放題」「九割非正規化」ができる国を一日も早く作れと要求している。

 また、「経労委報告」は、労働者の賃金闘争を解体し、労働者に団結も権利も労働組合もない〝労働監獄〟を強制しようとしている。それが年功型賃金解体―成果主義賃金導入攻撃だ。何年働こうと、何人家族がいようと、成果を出さない労働者にはこれまでのような賃金は払わない、労働者の世代間の分断・競争を強め、賃下げと団結を破壊する攻撃だ。

 「経労委報告」が毎年繰り返す「総額人件費の原資は企業が生み出す付加価値だ」というセリフを許してはならない。このセリフは賃金闘争を解体するための言葉だ。われわれは、「生きていける賃金を出せ」という賃金闘争を頑強に闘い、労働法制改悪攻撃を粉砕しなければならない。

 

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 安倍や資本家たちは、未だに「アベノミクス」への期待を煽っている。それは「第三の矢」=「成長戦略」で「労働基準法」などの「労働者保護法制」を「資本家のための法制」へと逆転させ、戦後的「賃金制度」を一変させるためだ。

 資本家たちが、「本業で利益が上がらない」状況はますます強まっている。パナソニック、東芝、日立、ソニー、シャープなどの家電企業は、一斉にテレビの海外生産や国内での生産・販売からの撤退を発表している。本業で利益が上がらないパナソニックは、介護事業に参入すると発表している。「超高齢化社会」の介護保険料という労働者人民からの税金を強奪することで生き延びようということだ。

 資本家たちは、労働者を低賃金、団結破壊の職場で使い捨てる攻撃を強めている。日本郵政や「ユニクロ」を展開する「ファースト・リテイリング」では、いくら年齢を重ねても最高年収が30代前半の「正社員」の平均年収にとどまり、「解雇自由化」に向けた水路として「限定正社員」を拡大している。「ユニクロ」会長・柳井は、今年の入社式で新入社員に対して「全員が経営者の意識を持て」と号令し、労働者の団結を徹底的に破壊する意図をあらわにしている。小泉政府以来、「規制緩和」で利益を懐に入れてきた派遣業界最大手である「パソナ」会長・竹中平蔵は、「労働者派遣法」改悪でさらに利益を手に入れるために、「日本から正社員をなくせ」と叫んでいる。

 「経労委報告」が強調する「生産性向上」なるものは、このように資本家側の攻撃を全面化させることを狙うものだ。朝鮮戦争後に吹き荒れた「生産性向上運動」は、階級的労働運動を潰し、労使協調の労働運動を育成することを目的にしていた。今、「経労委報告」が叫ぶ「生産性向上」は、恐慌情勢に直面している日帝資本が「労使協調」の労働組合を飼い馴らす余裕もなくしたうえでの〝悲鳴〟だ。原発輸出や武器輸出で「死の商人」への道に救いを求める姿も資本主義世界経済の危機を示すものにほかならない。

 われわれの闘いは、悲鳴を上げる資本家たちに引導を渡すことだ。金融政策と財政出動で〝景気回復〟なぞと粉飾し、必死に延命するために「アベノミクス」や「成長戦略」に希望があるかのように描くペテンを暴き出し、「アベノミクス」粉砕、「成長戦略」粉砕を掲げて闘う労働者の部隊を広大に建設しよう。


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 「連合」は、安倍が呼びかけた「政労使会議」で、資本家たちと「経済の好循環実現」なる合意文書を発表し、「アベノミクスによる賃上げ」というペテンに加担している。資本家から「安定した労使関係」「パートナー」と呼ばれても平然としている「連合」は、労働者の窮乏生活やこれに対する怒りとはまったく無縁な存在だ。その証拠に、「残業代ゼロ化」に向けた「労働基準法」改悪を審議する労働政策審議会に同席することだけにこだわり、改悪法案を作成するための「答申」を許した。こんな「連合」が「非正規労働センター」を設置しているが、「非正規問題にも取り組んでいる」というアリバイ作りと、「本工主義」労働運動の下に「非正規雇用」労働者の怒りを押さえ込むためだ。

 「連合」の労働者に対する敵対は、ますます深まろうとしている。資本家たちは、「パートナー」である「連合」に、海外での労働運動破壊に協力しろと要求している。これに応じて「連合」加盟の「UAゼンセン」は、スーパーを展開するイオングループとの間で「グローバル枠組み協定」を締結した。「労働組合」の名の下に、ユニオンショップ協定で労働者をがんじがらめにし、イオン資本に抵抗する労働者を押さえ込むという役割を日本から海外へと拡大しようというのだ。

 全労連もまた、「デフレ脱却」を求め、〝永遠の資本主義〟を願望しており、労働者に資本の鉄鎖を受け入れさせる勢力だ。

 われわれ全労交は、このような「連合」、全労連を超え、「戦後労働運動」の労使協調路線と「本工主義」「企業主義」「国益主義」を突破して闘う労働者の新たな結集軸を建設するために闘いを開始した。だが、全労交の中軸的争議として取り組もうとしたサントリー・SPS争議は、争議当該の脱落・逃亡によって敗北した。また、ヤンマー争議は、争議当該が「生活保護の不正受給」を理由とした弾圧に対して全面屈服し、国家権力への屈服を正面から突破する姿勢を放棄してわれわれとの連絡を切断した。全労交の呼びかけ人が当該となった争議がこのような結果になったことは非常に痛苦な事態である。これらの事態を痛苦に総括し、労使協調の労働組合の制圧下にある労働者、未組織職場にいる労働者、「非正規雇用」労働者とこれまで以上に結びつき、資本と国家権力との非和解の闘いをこれまで以上にやりぬかねばならない。われわれが目指す労働組合運動を実現するための新たな闘いを、全労交の原点である寄せ場労働運動の強化をもって成し遂げよう。


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 世界の労働者は、資本と国家権力の攻撃に対して実力―非和解で闘いぬいている。韓国労働者は、朴槿惠政権が打ち出している「非正規雇用」拡大、「解雇要件の緩和」、「労働時間規制の緩和」、「職務、能力・成果を中心にした賃金体系への変更」を内容とする「労働市場構造」改悪を阻止するための4月ゼネストを決定している。イギリス労働者は、「緊縮政策」による賃金凍結を粉砕するゼネストを闘っている。南アフリカ労働者は、プラチナ鉱山労働者が警察官による虐殺弾圧にひるまず闘いぬいた長期ストライキの地平を前進させ、「労働者階級の独立」を掲げた労働運動建設を開始している。

 われわれは、いつまでも遅れをとってはいられない。安倍の「集団的自衛権行使」の閣議決定をもっての戦争突撃は、日本労働運動を戦前のような「産業報国会」型労働運動に転落させることを条件にしていることを肝に銘じ、2015年春闘の爆発を実現しよう。日本労働運動の前進・飛躍を実現していくために、「非正規」争議、公務員労働運動、教育労働者運動、寄せ場労働運動、闘う原発労働者の組織化を全力で推進しよう。

 とりわけ、大阪・釜ヶ崎での「維新の党」の大阪市長・橋下直轄の寄せ場解体攻撃を許してはならない。橋下の「西成特区構想」にもとづく「センター縮小・移転」計画は、「西成区の活性化」の名の下、すでに開始している監視カメラ増設と一体となった「浄化運動」=寄せ場解体攻撃だ。寄せ場労働運動の条件を、根こそぎ一掃してしまおうという攻撃を、アブレ―野宿―野垂れ死にの淵から決起する寄せ場・日雇い労働者の怒りの決起で粉砕しよう。

 安倍の戦時国家体制形成―戦争動員攻撃と対決する卒・入学式での「君が代」不起立闘争の爆発をかちとろう。全国寄せ場交流会が呼びかける日建連、日本経団連、厚生労働省に対する三・三〇寄せ場春闘集中行動を闘おう。この闘いのなかから「連合」、全労連を突破して闘う日本労働運動の新たな結集軸を建設する事業の前進をかちとろう。


行動提起


3月30日(月)

全国寄せ場・日雇労働者 対厚生労働省団交、対日本経団連・日建連追及―弾劾行動

 午前7時 東京・山谷 城北労働・福祉センター前集合

 呼びかけ 全国寄せ場交流会


4月8日(水)

キヤノン電子株式会社とキヤノン電子労働組合による退職強要に対する

損害賠償請求事件 控訴審判決公判

 午後1時10分~ 東京高等裁判所 822号法廷