11.4 対労働局行動に取り組む
福岡・築港日雇労働組合
庁舎内で一時間にわたって交渉
11月4日、福岡・築港日雇労働組合(福日労)は、60人の日雇い・野宿の労働者の結集で、交渉を軸とする対福岡労働局行動に取り組んだ。
福日労は、今年8月、福岡日雇い団結夏祭りに際して、福岡県労働局とともに政府―厚生労働省の出先機関である福岡労働局に対して要求書を提出していた。要求書の内容は、日雇い・野宿の労働者のための公的就労対策事業を興すよう求めるものである。今回の交渉は、この要求書に対して労働局が回答する場として設定されたものである。
午前10時30分、労働局が入る合同庁舎の前にある中比恵公園に、日雇い・野宿の仲間たちが結集する。組合旗のもとに集まった労働者たちに、福日労の仲間が要求書を読み上げ、その内容を全体であらためて確認する。
交渉は、庁舎内で約1時間にわたって行なわれた。労働局からは、窓口として対応してきた総務部の企画室の司会のもと、職業安定部から職業対策課の雇用指導開発係長と職業安定課の雇用保険係長、さらに地方訓練受講者支援室の就労支援係長の3人が出席し、書記が話し合いの内容を書き記していた。
「失業対策方式は採らない」とかたくなな姿勢
国側からの回答を含めたやりとりの大部分は、雇用指導開発係長によってなされた。「失対事業方式」というのは、戦後の失業者対策として、国が直接事業を興し、そこに失業者を吸収する、いわゆる「失業対策事業」であり、「旧採炭地」すなわち筑豊で最後まで残ったような方式のことである。かつての全日自労が実力闘争をもって、様々な要求をかちとっていったことに懲りた国は、「失対事業方式は採らない」と、かたくなな姿勢を崩さないのである。それを「失業者が滞留する」、すなわち失業状態が改善しないと言い繕っているのである。東京都が山谷労働者のために予算を組み、民間に受注させている「特別就労事業」や、大阪府と大阪市が協力して予算を組んで行なっている「高齢者特別清掃事業(高齢者特掃)」は、国の言う「失対事業方式」ではなく、「それぞれの自治体独自の方法」という認識である。これらの自治体が独自に事業を興すことに対して、国としては「失業者が滞留し、雇用状況が改善されない」ことから否定的であるという見解を持っている上で、「各自治体の独自性は尊重する」という見解を示した。「東京や大阪でやってるんなら、福岡でもやれるんじゃないかな」という言葉で念を押された労働局の役人共はうなだれるしかない体たらくである。
求人条件は「即決」、「日払い」、「年齢制限なし」でなければならない
「民間雇用の拡充」という点について政府の役人は、はじめ、「求人倍率が増加し、景気はよくなっているという実態を見てください」と胸を張った。これに対しすかさず、正社員が減らされ、「非正規雇用」労働者が大量に生み出されただけであるという、単なる数字のごま化しであることが突きつけられ、役人も認めざるをえず、またもやうなだれてしまった。
福日労は、「失対事業方式」であるかないか、民間による日雇い・野宿の労働者の求人の拡大か否かを問題にしているわけではない。実際に、日雇い・野宿の労働者に仕事がまったくと言っていいほどないという現状を問題にしているのである。たとえ仕事があったとしても、原発事故処理関連の仕事等しかなく、しかもこれらの仕事に就いても、まともに賃金すら払われることもないという実態を問題にしているのである。東京都の「公共事業への日雇い労働者吸収要綱」のようなものを県に作らせなければ、さらには、求人条件が「即決」、「日払い」、「年齢制限なし」でなければ、そのことは、日雇い・野宿の労働者の就労にとって、ほとんど意味がない。これらのことを徹底的に突きつけて、交渉を終えた。
「仕事よこせ」の闘いがますます重要
福岡市では、日雇い・野宿の労働者の仕事がまったくないと言っていいほど、厳しい状況が続いている。加えて、今や唯一の現金収入源とも言えるアルミ缶の回収が、福岡市の条例で昨年の7月から罰金付きで禁止され、生活保護を受給している仲間たちには、同じく5月から「生活保護ホットライン」なる密告回線(「たれ込みダイヤル」)が開設され、ますます締め付けと取り上げが強められている。その上での保護費の削減である。「仕事よこせ」の闘いがますます重要なものになっている。
さらに福岡市は、「アベノミクス」の「国家戦略特区」の一環として、「グローバル創業・雇用創出特区」構想なるものを推し進めている。「10年で50万人の雇用創出」を謳っているが、この構想の眼目は「労働規制の緩和」なのであり、安倍政府が狙う「残業代ゼロ化」、「生涯非正規化」、「解雇自由化」の先兵役を引き受けようというものだ。膨大な労働者を低賃金・無権利でこき使い、搾り取り、使い捨て、野宿―野垂れ死にを強制しようという攻撃に他ならない。
「一人の野垂れ死にも許さない」闘いが必要
福日労は、日雇い・野宿の労働者と同じ運命を背負わされようとしているすべての労働者の利害を担い、ともに闘う団結を形成すべく、日雇い・野宿の労働者の先頭に立って「仕事よこせ」の闘いをやりぬいていくことで、階級的革命的労働運動の前進を断固切り拓いていく決意だ。全国の寄せ場が就労の窓口としては解体的な状況が強まる傾向にあるとは言え、寄せ場と日雇労働組合は、闘う拠点として堅持され、多くの労働者に「このように闘えば勝てる」という勝利の展望を具体的に指し示す闘いとその団結が存在している。全国いたるところに「非正規雇用」の労働者が生み出され、雇用と生活の不安、職場や日常生活における不満が渦巻き、「このままでは生きていけない」という怒りが充満している。かつて、政府―厚生労働省との団体交渉の席上、山谷や釜ヶ崎の公的就労対策事業が「暴動対策」としてなされたことを、図らずも役人の口からもれたように、実力闘争こそが確信に据えられなければならない。全国いたるところで、かつての個別の労働争議や山谷や釜ヶ崎という限られた地域に押し込められていた実力をもった闘いが、再び前面に躍り出なければならない時代が到来しているのだ。「一人の野垂れ死にも許さない」闘いとして、その団結を具体的な形をもって打ち固める越年・越冬闘争に向かって福日労は突き進んでいる。