11・6 センター交渉を闘う

11・6センター交渉を闘う

 

                                         東京・山谷日雇労働組合

 

激減する山谷の民間日雇い求人と高まる公的就労事業への就労比率

 

 現在、山谷の日雇い求人は、極端に減っている。マスコミは、2020年開催のオリンピックにむけて、関連する工事が急増していると報道している。しかし、「オリンピック関連」の建設求人はほとんど山谷を経由せず、人夫出し業者が飯場に確保している労働者や、自宅などから工務店などに向う「直行」の労働者によって占められている。わずかに山谷で求人する手配師も、「常連の数人だけの求人しかない」と嘆くありさまだ。朝の泪橋交差点で見ていても、山谷のドヤから作業着などを入れたデイパックを背負った労働者が出勤のために南千住駅方向に歩く様子は見て取れるが、その数は微々たるものだ。これは、元請けゼネコンが下請け業者に対して「年齢制限」を強め、「玉掛け」「リフト」など数種類の資格を持った「多技能工」を要求し、下請け業者も携帯電話を持った労働者を優先的に雇用する動きを強めているからだ。

 「多技能工」「携帯電話所有」という条件を持たない山谷の日雇い労働者にとって、わずかに残った雇用―収入の道は、玉姫職安で仕事紹介されている東京都が行なう公園清掃などの公的就労事業である「輪番」の仕事であり、センターで紹介されている日雇いの民間求人や荒川区が行なっている道路清掃などの就労事業に限られてきている。その玉姫職安の「輪番」の仕事も1週間に1回、所得税や弁当代を引かれた手取りが約7700円というものであり、1ヵ月に4回就労しても3万円にしかならない金額だ。これでは、1泊2000円を超す山谷のドヤに泊まることなぞできはしない。山谷の「イロハ商店街」や浅草の「新仲見世商店街」のアーケードの下などで野宿し、さまざまな団体が行なう炊き出しに並んで、やっと生活できている。

 

野宿する労働者に「ハローワークに行け」と追い返すセンターを追及

 

 11月6日、「城北労働・福祉センター」(センター)内で行なわれた交渉は、センター側から「仕事紹介」「給食」「宿泊」を受けるための「利用者カード」の発行を担当する事業課長、就労担当課長、管理課長、管理係長が出席し、東京・山谷日雇労働組合(東京・山日労)側には実際に「利用者カード」の発行を拒否された労働者も同席して開始された。

 センター側は、東京・山日労からの「交渉申し入れ」の内容に即して「『利用者カード』の発行は平等にやっている」「日雇い労働者として安定した生活が見込まれる労働者に『利用者カード』を発行している」「申請者の状況によっては生活保護などの関係機関を紹介している」といった型どおりの回答を行なった。

 これに対する東京・山日労の追及は、「組合の労働相談に寄せられている労働者の声は、わけがわからないまま、『利用者カード』は作れないと言われ、相談ブースから追い払われたというものだ」「『利用者カード』を発行する際の基準を明らかにしろ」という点から開始された。センター側は、これに対して「申請者が日雇い労働者として安定した生活ができるかどうか、本人の状況を聞き取り、職歴や置かれてきた状況を聞いて、日雇い労働者としてやっていけるかを判断して『利用者カード』の発行を行なっている」なぞと回答してきた。こんな「回答」では「利用者カード」発行の基準が一体何なのかサッパリ分かりはしない。さらに、日雇い仕事への就労であるが故に生活が安定しないという実態があるからこそ、センターもパンや牛乳の「給食」、食事・入浴付きの「宿泊」を利用できるようにしているにもかかわらず、「日雇い労働者として安定した生活ができる」ことを「利用者カード」発行の条件にするなぞと言うのは矛盾も甚だしい。

 続いて「利用者カード」の発行を拒否された労働者が、センターの相談担当職員の対応を具体的に暴露した。この労働者は、「利用者カード」の発行を申請するためにセンターの相談担当職員と2回面談したが、相談担当職員は2回とも「ハローワークに行け」「宿泊のためにカードを作るのか?」「カードを作っても仕事がないから意味がない」と言い、相談ブースから労働者を追い払ったのだ。この暴露を受けて東京・山日労からは、「60歳を過ぎて、野宿していて、携帯電話もない労働者がハローワークに行って就職できるのか!」とセンター側を追及した。この相談担当職員の対応に対する厳しい追及が続き、ついにセンター側は、「誤解を与える言い方だった」「正しい言い方ではなかった」なぞと自らの非を認めざるをえなかった。

 

「職員による見極め」を「利用者カード」発行基準と居直るセンターを許すな

 

 東京・山日労の「利用者カード」発行をめぐるセンターへの追及は、さらに続いた。センターは、60歳を過ぎ、建設労働の経験を持ち、「イロハ商店街」で野宿しているという条件が同じ2人の労働者に対し、1人には「利用者カード」を発行し、別の労働者には発行しないという分断を行なっているのだ。この点を指摘して、東京・山日労は、「以前、センターとの間で『利用者カード』発行の要件は、1ヵ月以上山谷地区に住み、就労意欲のある者、つまり玉姫職安のダンボール手帳を持ち、『輪番』の仕事に就労した証拠である印紙を1枚貼ってあればよいとしていたが、その発行基準が変わり、ハードルが高くなったのか?」と問いただした。これに対して、センター側は、「ダンボール手帳と印紙1枚という基準をクリアしても、『日雇い労働者として安定した生活が見込まれる』『日雇い労働者としてやっていける』という『見極め』をして発行している」という回答を繰り返した。東京・山日労は、「では、その『見極め』の基準は何か、明らかにしろ」と当然の追及を行なった。しかし、センター側の回答は「日雇い労働者としての状況を聞き取り、その人にとって何がふさわしいか判断するということだ」なぞという回答に終始した。こんな回答で、「見極め」の基準が何なのか分かるはずもない。結局、センターの「利用者カード」発行にあたっての「基準」なるものは、相談担当職員の主観だらけのものでしかないということだ。「その人にとって何がふさわしいか判断する」なぞというのは、日雇い労働者として生きて行くという本人の意志とは無関係に、行政が敷いたレールに乗ることを労働者に強制すると言っているのに等しい。東京・山日労は、「こんな回答で納得する労働者はいない。職員の主観だらけの『見極め』なぞ基準でも何でもない」と怒りを叩きつけた。2時間にわたる交渉の末、「予定時間を1時間も越えている」と逃げるセンターを弾劾し、再度の交渉に応じるようにと突き付けてこの日の交渉を終えた。