特集 「世界大恐慌爆発情勢下の世界の労働運動」
ギリシャ
ギリシャでは、1月25日に総選挙が行なわれ、「債務返済拒否」と「緊縮財政政策の中止」を呼びかけてきた「急進左派連合」(SYRIZA)が、右派だが「反緊縮」や富裕層からの増税を掲げる「独立ギリシャ人党」と連立政権を組み、政権に就いた。第二次世界大戦後、内戦や軍事政権を経て、中道右派の「新民主主義党」(ND)と中道左派の「全ギリシャ社会主義運動」(PASOK)の二大政党支配が続いてきたギリシャで、このような左派政権が誕生するのは初めてのことだ。
SYRIZAの「躍進」の背景には、2010年に始まった「緊縮財政政策」によって、4年間で平均賃金が40パーセントも下降し、2009年に9パーセントだった失業率が25パーセント、若年層の失業率が約50パーセントになるという賃下げ―高失業がある。また、多岐に渡る増税が実施されるいっぽう、医療予算や年金など社会保障は削減され、長期間の失業によるうつ病発症者や自殺者の増加、貧困層の拡大、栄養失調の児童の増加、幼児死亡率の上昇といった生活苦がある。
しかし、SYRIZA党首から首相に就任したチプラスは、「欧州連合」(EU)側に譲歩する姿勢に転換し、債務返済や年金・給与の支払いに充てるとして、地方自治体や公的機関に対し、余剰金を中央銀行に移管するよう求める政令を出した。これに対して、4月23日、アテネで学生が「チプラス(首相)、バルファキス(財務相)、大学の金に手を出すな!」「一ユーロたりとも渡さない!」と叫んで抗議デモに決起し、財務省前で警官隊と対峙した。翌24日には、アテネ中心部で自治体職員や病院職員がデモに決起し、首相官邸に迫り、機動隊と対峙した。
6月29日、チプラスは30日が返済期限となっている「国際通貨基金」(IMF)からの融資の返済は履行しない方針を表明した。この日、アテネでは「緊縮財政政策」に反対する大規模デモが闘われた。そして7月1日、ギリシャは「債務不履行」(デフォルト)に陥った。7月5日に行なわれたEU側が要求する「財政構造改革案」の受け入れの是非を問う国民投票は、61パーセントが「ノー」を突きつけた。7月15日には、ギリシャ最大の公務員労組である「ギリシャ公務員連合」(ADEDY)などが増税や年金支給開始引き上げなどの「緊縮財政政策」に反対する24時間ストを闘い、年金受給者がデモを闘った。
11月12日には、ADEDYと民間部門の最大労組である「ギリシャ労働総同盟」(GSEE)が増税と「年金改革」に反対する24間ストライキに入った。さらにGSEEは、12月3日に年金改革に反対する24時間ゼネストを呼びかけ、共産党系の「全ギリシャ戦闘的労働者戦線」(PAME)も12月3日のストに参加することを表明している。
フランス
フランスでは、4月9日、30万人が参加して、解雇手続きの簡略化や長時間労働を容認する「労働規制の緩和」を目的とした通称「マクロン法案」に反対し、「緊縮財政政策」に反対するデモが闘われた。
「マクロン法案」とは、昨年8月に経済相の就任したマクロンの名前から来たものだ。マクロンは、就任以前にも大統領・オランドの側近として、法人税と社会保障費の企業負担分を軽減する経済政策「責任協定」を立案した人物だ。「経済成長、経済活動、経済的機会の平等のための法案」を正式名とする「マクロン法」は、現行法が企業に対し、解雇対象者に社内での配置転換先や、国内外でのグループ企業での転職先を可能な限り紹介するよう義務付けているものを、企業の義務を自社内での配置転換先の紹介に限定、転職に関わる責任は労働者が負い、解雇などをめぐる訴訟の迅速化や、経済的理由による集団解雇の要件緩和も企図するものだ。また、同法は、解雇規制の緩和に加え、年5日に制限されている日曜営業を年12日に拡大、国が定める特定の観光・商業地域では日曜営業を自由化し、深夜〇時までの営業を認め、労働者に長時間労働を強制しようとするものだ。
デモに立ち上がった労働者は、「「マクロン法は企業に利益を与え、労働者には大量の失業をもたらすだけだ。子どもたちの将来の雇用にも確実に悪影響を及ぼす」と同法を批判している。
ドイツ
ドイツでは、今年に入ってストライキが急増している。6月中旬段階でストライキによる「労働損失日数」は既に延べ35万日を超えている。昨年は1年で15.6万日、2010年はわずか2・8万日だった。ストライキを闘っているのは、好調な輸出産業の労働組合ではなく、鉄道、保育、郵便などの公共部門の労働者だ。鉄道運転士の組合「ドイツ機関士労組」(GDL)は、5パーセントの賃上げ、団交権の拡大等を要求し、「今世紀最長」と言われた5月5日~10日のストをはじめ、10ヵ月の間に9回のストライキを闘った。GDLのストライキは、1日につき600万人以上の乗客と60万トン以上の貨物に影響を及ぼし、会社に約1000万ユーロの損害を与えている。ベルリンのシャリテ病院(大学病院)では5月に、ケア労働者たちが、患者とスタッフの関係の改善のための措置を求めて2日間の職場放棄を行った
ドイツの大企業では、取締役の「お目付け役」である監査役会に、労働組合の代表を参加させることが義務付けられている。このような労使協調路線が、ドイツでストが少ない理由と言われてきた。労使協調路線でストを闘わずに賃上げを実現するというのが「ドイツ・モデル」とされ、「金属産業労組」(IGメタル)がその中心に位置していたが、IGメタルが最後に全国的なストライキを行なったのは1984年だ。
これに替って、ストライキの中心は公共サービスに移っている。ドイツの再統一以降、公共部門の経営管理者たちは経営再建の一環として、従来の公共部門における団体交渉制度(職種に関わりなく一律の賃上げ率が適用される)を解体した。また、従来、列車の運転士、教員、郵便労働者等の労働者にはストライキ権が認められないが、終身雇用と経済成長率に連動した賃上げが保証されてきた。しかし、このドイツ特有の制度も廃止された。さらに、公共サービスの漸進的な民営化とそれに伴う失業と組織率の低下によって、公共部門の賃金が競争にさらされ、賃金の階層分化が急速に進んだ。これらを背景にして公共サービス部門でのストが多発しているのだ。
イギリス
イギリスにおけるストライキの回数がここ数年で激増し、その規模も拡大している。ストライキが実施された期間と参加人数を基に算出した「労働損失日数」を英国の国民統計局が調査。昨年は78万8000日に達した。2013年の44万4000日からおよそ倍増。また2012年は24万9000日だった。
昨年7月、スト制限のための労働法改悪攻撃と公共部門賃金の凍結攻撃に対決して100万人以上が一日ゼネストを貫徹したイギリス労働運動は、2015年に入っても保守党・キャメロン政権が強行する全面的な「労働組合規制法」案と公共部門の民営化攻撃に対決して闘いぬいている。
今年7月、キャメロン政権は、労働組合の活動に対する全面的な規制強化のための法案を議会に提出した。その内容は、第1に、スト権を確立ための要件を「組合員の50パーセント以上の投票」としている。第2に、公共サービス部門のストについては、組合員の40パーセント以上の賛成と4ヵ月ごとの「スト権投票」を義務付けている。第3に、組合費のチェックオフ(給与からの天引き)廃止、第4に労組の職場代表の活動時間の制限、第5に、ストライキの事前通告の時期を7日前から14日前に延長、第6に、ピケ要員の警察への登録の義務化、第7には、「スト破り要員」として「非正規雇用」労働者を動員を可能にするというものだ。これはまさに「ストつぶし法」案だ。
この「労働組合規制法」制定攻撃とともに、公共部門の民営化攻撃も激化している。ロンドンのナショナルギャラリー(美術館)では、来館者に対する窓口サービスやガイドなどを民間委託する方針を示した。これに対して「イギリス労働組合会議」(TUC)に加盟する「公務員組合」(PSC)は、今年2月から断続的にストを闘い、8月からは無期限ストを宣言して、延べ100日以上のストを闘いぬいている。
7月には、ロンドンの地下鉄の労働組合が10数年ぶりの大規模ストに突入している。ロンドンの地下鉄は、9月から一部の路線で金曜と土曜の夜間運行を開始する計画だったが、そのための給与や労働条件などを巡る労使交渉が決裂し、組合側はストに突入したのだ。
アメリカ
アメリカでは2月に、石油精製産業の「非正規雇用」労働者3万人がストライキに決起している。 「米国鉄鋼労組」(USW)所属の労働者3万人が、2月1日正午からストライキに突入した。ストライキに決起した労働者の多くは「非正規雇用」労働者で、彼らが所属する石油工場は合計9ヵ所に及び、アメリカの原油精製量の10パーセント以上に影響を及ぼしている。
石油労働者を代表する「鉄鋼労組」と、エネルギー業界を代表するロイヤル・ダッチ・シェルは、1月21日から賃金と作業場の安全条件などをめぐる交渉を行ったが、交渉は決裂した。「鉄鋼労組」の国際委員長は 、「シェルが交渉を拒否して席を立った」とし 「われわれは操業を中断することしか選択肢がない」と宣言した。労働者たちは、今回のストライキで賃上げの他にも 超過労働、不安定な労働条件、労働者と地域社会を威嚇する火災、化学ガス放出と漏出、爆発などの危険な作業場の安全要件、 労組弾圧、「契約職」拡大などの問題を改善しようとしている。
一方、アメリカでは、反労働組合法ともいうべき「労働権法」を制定する攻撃が続いている。3月9日には、ウィスコンシン州で組合費の義務的徴収を禁止する等の「労働権法」が制定された。これで「労働権法」が制定された州は25となった。「労働権法」は、南部やロッキー山脈地域の諸州では1940~50年代から導入されており、これらの州では労働組合の組織率が極端に低く、賃金水準も低いことが知られている。ウィスコンシン州では、労働組合の組織率は、「労働権法」制定を強行した知事・ウォーカーの就任前の14・4パーセントから11・7パーセント下がっている。特に、「全米教員連盟」傘下の組合の組合員数は3分の1になり、州の従業員数も大幅に削減され、組合員数が70パーセント減少している。
労働組合の組織率が11パーセント台に下落しているアメリカでは、労働組合への組織化を拡大するために、マクドナルドをはじめとするファスト・フード店を対象にして、時給を15ドルに上げることを要求する行動が取り組まれている。
4月15日、236都市、参加者約6万人の「ファイト・フォー・フィフティーン(Fight for Fifteen)運動」が全米で展開された。連邦最低賃金が7・25ドルにとどまるなか、人間らしい生活ができる最低水準となる貧困ラインを上回る賃金、15ドルを獲得することが目的だ。
アメリカのスーパーマーケットなどの小売産業で働く労働者の賃金は、他産業で働く労働者の賃金よりも32・4パーセント低く、働いているにもかかわらず貧困ラインを下回る、いわゆる「ワーキング・プア」の比率が10・1パーセントにのぼっている。他産業で働く労働者の6・6パーセントが「ワーキング・プア」であることと比べればはるかに高い。低賃金にあえいでいるのは、ファスト・フードや小売といった産業で働く労働者とその家族だけではない。大学新卒者の賃金についての調査結果では、2000年比で賃金が7・7パーセント減少し、26万人が最低賃金水準で働いている。製造業でも同様で、60万人が時給9・6以下で、150万人が時給11・9ドル以下で働いている。「ファイト・フォー・フィフティーン運動」の背景にはこうした全米で拡大する低賃金の問題がある。
「ファイト・フォー・フィフティーン運動」の中核を担っているのは、「サービス従業員労働組合」(SEIU)と地域住民の組織、学生、中小企業事業主、宗教団体、NPOといった草の根の組織だ。運動は全米レベルに拡大し、各地域で進んでいる州別最低賃金引き上げの原動力となっている。
ブラジル
「新興市場国」の一つであるブラジルでは、米帝の金利引き上げ観測を受け、資金の流出が拡大し、原油価格の下落とあいまって景気後退が鮮明になり、資本の解雇攻撃、財政悪化を理由とした国営企業の民営化・事業規模の縮小を強まり、労働者の生活を直撃している。これに対して、労働者は、高速道路占拠デモ、無期限ストライキで反撃している。 1月12日、ブラジルの多国籍自動車メーカーの労働者が、産業内で広がっている整理解雇に対抗し、 共同で高速道路を占拠するデモを闘った。ブラジルのサンパウロ市郊外の高速道路で闘われたデモには、 フォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツ、フォードなどの多国籍自動車メーカーの労働者約3万人が参加した。 労働者たちが占拠した高速道路はブラジルで最大の港につながるため、港を利用する企業に大きな打撃を与えた。
パラナ州では、州立学校の教職員と大学職員らが2月9日から無期限ストに入っている。パラナ州は2年以上前から深刻な財政危機の状態にあり、2月4日の緊急議会で危機からの打開を図る新たな「緊縮パッケージ法」案が提出された。しかし、同法案が成立すれば教職員の福利厚生が削られるなど不利な影響が出ることから反対の声が上がっている。 州内の公立学校の教職員らは9日、新法案への反対のほか、給与の支払問題の解消や生徒が少ないとの理由で州が昨年閉鎖した学級の再開を要求してストに突入した。パラナ州公教育労働組合によると、州内すべての州立校がストに賛同しているため、少なくとも9日と10日の二日間、公立学校に在籍する約95万人に影響が出た。また、州内に7つある州立大学のうちの4つがスト決行を10日までに決めている。
ブラジルの国営石油会社ペトロブラスの労働者が11月2日から無期限ストライキに入っている。ブラジル最大の石油労働組合は2日、ブラジルの国営石油会社であり世界で最も重要な石油会社の一つであるペトロブラスの民営化に反対して全国的なストライキに入った。石油労働組合連盟(FUP)は声明で、カンポス沖油田の半分および他の沖合油田における操業を停止したと発表している。同社は近年の原油価格の値下がりで経営状態が悪化し、最近では信用の格付けも「ジャンク」まで下がっている。今回のストライキの争点となっている計画は、巨額の債務を返済するために同社の資産の内151億ドル分を直ちに売却し、2019年までにさらに580億ドル分を売却するというものである。右派の政治家たちは投資の引き上げ、外注化、海底油田の民間企業による採掘に向けて圧力を強めている。
ペトロプラスと石油労働組合との当初の交渉は、賃上げをめぐる交渉であり、組合側の18パーセント賃上げ要求に対して経営側は8パーセントを提示していた。しかし、現在、組合側は賃金はストライキの主要な問題ではないとしている。
経営側はストライキによって生産が約5・5パーセント減少しているが、10日間程度の生産減少には耐えられると発表している。しかし、組合側は「会社はストライキの影響を過小評価している。すでに約200万バレルの生産が失われ、損失は4億レアルに達している」と発表している(1レアルは約30円)。
インド
「新興市場国」の一つであるインドでは、1月6日、モディ首相が進める民営化政策に反対して炭鉱労働者50万人がストライキに突入した。
インドでは世界最大の石炭採掘企業であるコール・インディア(国営)が国内生産の80パーセントを占めてきたが、モディ首相は42年ぶりに民間企業による採掘と販売の許可を発表。政府は競争促進により電力不足解消をはかるとしている。これに対して、労働者は、賃金引き下げと人員削減をもたらすと批判している。「インド全国鉱山労働者組合」のザマ書記長は、民間企業への商業用採掘の許可を半年以上猶予することと、石炭産業の民間開放前に組合との話し合いを政府が確約するまでストライキを続けると宣言している。そして、五つの炭鉱労働者組合の代表がデリーに集まり、「政治的協議」に臨んでいる。スト一日目には同社の生産量が64万5000トンと、通常の半分に減少した。これに対して経営側は、おもに臨時労働者を動員することで生産を継続している。
この炭鉱労働者のストライキ決起を受け、国民会議派、人民党、および左翼政党の系列を含む10の全国労働組合組織が共同で、2月26日をモディ首相の下での労働法改定をはじめとする一連の規制緩和に反対する「市民的不服従の日」として広範な行動に決起した。「市民的不服従の日」を宣言した共同声明では、「1月の炭鉱ストは労働者の全体的な士気を高めた。政府は石炭産業や土地取得に関する規制緩和、保険業の外国資本への一層の開放などを進めており、鉄道、防衛や他の重要産業への外国資本導入の意図も明らかにしている。石炭、銀行、保険、国有鉄道、電力などの産業規模の闘いが展開されている。鉄道や防衛産業を含む国営企業の労働者は4月に国会に向けたデモを計画し、それ以降ストライキを計画している。これは積極的な兆候である。労働組合は昨年、政府に対して10項目の要求を提出したが、残念なことに政府は何の行動も起こしていない」とモディ政権を批判している。
昨年5月の総選挙で勝利した人民党のモディ政権は、ヒンズー至上主義的政策を進める一方で、労働者に対する全面的な攻撃を進めている。モディ政権は、就任後の1年間は、労働組合からの抵抗をかわすために、人民党が政権を握っているラジャスタンとマディアプラデシュの両州で試験的に全面的な労働規制緩和を進めてきた。その「成功」をふまえて、今年の国会に、「独立以来の最大の労働改革」として、1947年の「労働争議法」、1926六年の「労働組合法」、1946年の「産業雇用法」を統合した新しい雇用関係法を提出する準備を進めている。それには、「①.従業員数300人未満の企業は政府の許可なしで従業員を解雇できる(現行法では従業員数100人未満の企業)、②.従業員数40人未満の企業は労働法の主要な規定の適用を免除される、③.労働組合の承認には10パーセント以上または100人以上の従業員の賛成が必要(現行法では7人以上)」といった内容が含まれている。
モディ政権の攻撃に対して、5月26日に11の労働組合全国組織(与党・人民党系の労働組合を含む)と50の公務員組合連合が全国労働組合大会を開催し、9月2日に全国的な一日ストを呼びかけた。これらの労働組合は、シン前政権の下で10項目の要求を掲げ、2010年から2013年にかけて三度にわたる全国ストを組織してきた。しかし、シン前政権は労働者の要求を無視しつづけた。インドでは1991年以降にラオ政権の下で進められた規制緩和政策の結果として、2009年には上位100人の富裕層の資産が合計で2760億米ドル以上となり、一方、労働者の賃金の上昇はGDPの成長率や物価上昇率を大幅に下回っている。不平等の拡大に対する労働者の怒りは高まっている。
9月2日のストを前に、8月27日に政労交渉が行われ、政府は最低賃金や社会保障に関連する要求や公務員の欠員補充などの要求を受け入れるとし、労働法改定については政労使の三者協議を実施するとしている。
韓国
韓国労働運動は、韓国資本と朴槿惠政権が強行しようとしている解雇規制緩和、「非正規雇用」拡大などを内容とする「労働市場構造」改悪攻撃に対して、民主労総を先頭にして、4月、7月、9月にゼネストを闘い、11月「民衆総決起闘争」を貫徹し、12月16日のゼネストへと登りつめている。
4月24日、韓国・民主労総は、(1)「さらにやさしい解雇、さらに低い賃金、さらに多くの非正規職」を狙う朴槿惠の労働者殺し政策粉砕」(「労働市場構造」改悪廃棄)、(2)公的年金強化および公務員年金の改悪中断、(3)最低賃金3万ウォン争奪、(4)「勤労基準法」全面運用および「労組法」第2条改正、すべての労働者の労働基本権争奪を掲げてゼネストを闘った。朴槿惠政権は、「労働市場の二重構造を解決する」「正規職労働者の雇用の硬直性が強く、企業が新規採用をしないので、通常解雇要件を緩和する」と言い、「一般的な雇用解約基準および手続きに関するガイドライン」と称する「解雇ルール」を制定しようとしている。
4・24ゼネストには、14の加盟組織に所属する2829ヵ所の事業場と、16の地域本部に所属する97の事業場の労働者が起ち上がった。ストライキには「金属労組」などの製造部門の労働者、「建設産業連盟」所属の建設労働者、「公共運輸労組」所属の学校「非正規職」および大学病院の労働者、「民主一般連盟」の清掃労働者などが決起した。また、スト権が認められていない教師と公務員も、集団年次休暇や総会開催などの方式でゼネストに合流した。「全教組」はこの日、3000人の教師が集団年次休暇闘争に突入している。「公務員労組」所属の組合員も「支部別非常総会」を開く方式でゼネストに合流した。
7月15日のゼネストでは、逮捕令状が発行された民主労総のハン・サンギュン委員長が映像メッセージで「11月には民衆総決起大会を開催する」と宣言した。つづく9月23日のゼネストは、同月11日に朴槿惠政権が「労働市場構造改革」に関連するガイドラインを作成すると発表し、与党セヌリ党も16日に関連する五つの法案を国会に提出した直後に闘われた。セヌリ党が提出したのは「勤労基準法」、「派遣労働者法」、「期間制労働者法」、「雇用保険法」、「労災保険法」の五改定法案。現在2年までの「非正規雇用」労働者の契約期間を4年まで延長できるほか、32業種に制限されている派遣労働者の受け入れ対象を製造業や専門職の高齢者にも拡大する内容となっている。さらに、一度は民主労総との共同闘争を確認して労使政委員会から離脱していた韓国労総が、労使政委員会に復帰し、政府案に同意するという局面のなかで9・23ゼネストは闘われた。
11月14日の「民衆総決起大会」には全国から14万人がソウルに結集し、朴槿惠政権打倒にむけて大統領府・青瓦台への実力進撃デモを機動隊の殺人的な高圧放水車を使った弾圧体制と対決して闘いぬかれた。この闘いのなかで、農民・ペク・ナムギ氏が高圧放水の直撃を受け、危篤状態が続いている。
12月1日、新政治民主連合とセヌリ党が臨時国会を開き、 労働者たちが反対している労働改悪法案を強行処理することを合意した。民主労総は二つの政党に対し、12月16日のゼネストで反撃すると宣言している。 (木村)