世界の労働運動
「週35時間労働制」解体・「解雇規制」緩和の「労働法改定法案」粉砕に決起するフランス労働者
フランスで、大統領・オランド(社会党)が打ち出した「労働法改定法案」を粉砕する労働者・学生のストライキ、デモが連続して闘われ、全土に拡大している。
3月9日には、昨年11月の「武装襲撃事件」以来の「非常事態宣言」下のフランス全土で40万人~50万人といわれる労働者・学生が「労働法改定法案」粉砕のストライキ、デモに起ち上がった。フランス国鉄(SNCF)では、「仏労働総同盟」(CGT)、「民主労働総同盟」(CFDT)、「連帯統一民主」(SUD)、「自治労働組合連合」(UNSA)の四労組が共同で24時間ストを闘い、パリ都市交通公団(RATP)の労働者もストを闘った。若者たちもこの闘いに決起し、全国で90の高校、パリでは9高校、リヨンでは5~6高校でバリケードストライキが闘われ、労学連帯の闘いとしては、1968年以来最大規模のものとなった。
3月17日にも、ストライキ、デモは闘われ、3月25日には、抗議デモに参加していた少年が警官から暴行を受ける動画がインターネットで広まり、これに対する抗議の実力闘争が機動隊とのあいだで闘われている。3月31日には、全国規模のストライキが闘われ、パリのエッフェル塔が閉鎖され、列車の運行が停止した。デモは、フランス全土の200ヵ所で闘われ、西部のナントとレンヌではデモ隊が機動隊との実力攻防をが闘いぬいている。
大統領・オランドは、1月18日に、「雇用対策プラン」を発表し、スイスで行なわれた「世界経済フォーラム」(ダボス会議)では、産業相・マクロンが、「労働法改定法案」は事実上「週35時間労働制」の終了になると宣言した。フランスの失業率は、10・6パーセントにのぼっている。オランド政権下の4年間で、経済は停滞し、失業が増加、とくに青年の失業率は24パーセントに達している。そして、この失業率の高さがオランドの支持率を19パーセントにまで引き下げている。オランドは、来年の大統領選で再選を狙っており、そのために「若者らの雇用の安定を高めたい」と言いつつ、「企業側に採用を増やす機会を与え、柔軟性を提供する」と称して、解雇や採用における企業側の裁量を拡大し、週35時間の法定労働時間を超える労働について超過勤務手当を削減しようとしている。現在は25パーセント~50パーセント上乗せされている超過勤務手当てを10パーセントに下げ、企業側のコストを下げることで35時間以上働かせ、実質的に「週35時間労働制」を解体することを狙っているのだ。「労働法改定法案」では、労使が合意すれば最長「週46時間労働」まで容認する内容になっている。また、労働者を解雇する場合の賠償金の上限や異動拒否の制限などが盛り込まれている。この「労働法改定法案」について、通常はオランド政権に批判的なフランス版経団連・「フランス企業運動」(MEDEF)は、もろ手をあげて賛成している。
5月26日には、パリで覆面姿の若者らが警察と衝突。各地の製油所や原子力発電所でもストが行なわれ、運転の停止や遅延を強制している。この日、国内各地の街頭で抗議行動に決起した労働者・学生の数は30万人と発表されている。仏当局によると、身柄を拘束されたデモ参加者の数はパリの32人を含め62人に上り、また各地での衝突で警官15人が負傷、パリではデモ参加者1人が重傷を負い入院した。北部にある油槽所や製油所でのストは一部中止されたものの、各地のガソリンスタンドではこの日も給油を待つドライバーが長い列を作った。労働組合の活動家らによって製油所が数日間封鎖されたことにより、ガソリンスタンドの3分の1で、給油が全くあるいはごくわずかしかできない状態になった。スト終了で1ヵ所の製油所は運転を再開したものの、国内に8ヵ所ある製油所のうち5ヵ所で引き続き運転が中止されたり生産量が減らされたりしている。南部トリカスタン原子力発電所では、職員らが積み上げたタイヤに火をつけ、黒煙が上がった。CGTによると、国内の電力の4分の3を供給している原発19ヵ所のうち、3ヵ所を除く全てがストを決行した。