11.11 対福岡労働局行動に取り組む
福岡・築港日雇労働組合
「公的就労対策事業を行なえ」
11月11日、福岡・築港日雇労働組合(福日労)は、日雇い・野宿の労働者の大結集で、交渉を軸とする対福岡労働局行動に取り組んだ。
福日労は、今年8月、福岡日雇い団結夏祭りに際して、政府―厚生労働省の出先機関である福岡労働局に対して要求書を提出していた。要求書の内容は、日雇い・野宿の労働者のための公的就労対策事業を興すよう求めるものである。今回の交渉は、この要求書に対して労働局が回答する場として設定されたものである。
午前10時30分、労働局が入る合同庁舎の前にある中比恵公園に、日雇い・野宿の仲間たちが結集する。組合旗のもとに集まった労働者たちに、福日労の仲間が要求書を読み上げ、その内容を全体であらためて確認する。次はシュプレヒコールだ。労働者たちの声が合同庁舎を揺るがす。11時が近づくと、全体の熱い拍手で交渉団を送り出す。
労働局からは、窓口として対応してきた総務部の企画室の司会のもと、職業安定部から職業対策課の雇用指導開発係長と地方訓練受講者支援室の就労支援係長、さらに職業安定課の雇用保険係長の3人が出席し、書記が話し合いの内容を書き記していた。
福日労が出していた一番目の要求である「東京都が山谷で行なっている『特別就労事業』のような、日雇い・野宿の労働者のための公的就労対策事業が行なえるよう、本省とともに検討すること」には、「労働局は独自の財源を持たないので事業は困難」、「要求の内容は、本省に伝えます」という回答。二番目の要求である「公的就労対策事業が行なえるよう、福岡県や福岡市に協力して、必要・可能な働きかけを行なうこと」に対しては、「要望があったことは、福岡市と福岡県に伝えます」「県や市から相談があれば労働局として相談に応じます」。三番目の要求である「以上の内容について、早急にわれわれとの話し合いの場を設けること」に対しては、「労働局で公的就労対策事業を実施できるものでないので、そのことが前提となる話し合いはできません」という回答であった。福日労が求める「公的就労対策事業の実施」に関する具体的な話し合いには一切応じないというかたくなな姿勢は、これまで通りである。
国側からの回答を含めたやりとりの大部分は、雇用指導開発係長によってなされた。「失対事業方式」というのは、戦後の失業者対策として、国が直接事業を興し、そこに失業者を吸収する、いわゆる「失業対策事業」であり、「旧採炭地」すなわち筑豊で最後まで残ったような方式のことである。かつての全日自労が実力闘争をもって、様々な要求をかちとっていったことに懲りた国は、「失対事業方式は採らない」と、かたくなな姿勢を崩さないのである。それを「失業者が滞留する」、すなわち失業状態が改善しないと言い繕っているのである。東京都が山谷労働者のために予算を組み、民間に受注させている「特別就労事業」や、大阪府と大阪市が協力して予算を組んで行なっている「高齢者特別清掃事業(高齢者特掃)」は、国の言う「失対事業方式」ではなく、「それぞれの自治体独自の方法」という認識である。これらの自治体が独自に事業を興すことに対して、国としては「失業者が滞留し、雇用状況が改善されない」ことから否定的であるという見解を持っている上で、「各自治体の独自性は尊重する」という見解を、再び示した。
「就労支援センター」、「技能講習」は、「焼け石に水」
こうした相も変らぬ回答を行なった労働局の役人共に対して、組合員の労働者から、国の回答がなんら実態にそぐわないものであることが、具体的、かつ切実な実態をもって突きつけられた。「失対事業方式は行なわない」という回答をめぐっては、実効性のない「就労支援センター」などの名前を挙げ、相も変らぬ現実離れした「技能講習」の名前を出してみても、そんなものが「焼け石に水」どころか、何一つ役に立ってはいないことが突きつけられ、国の役人共はうなだれることしかできない。築港において、白手帳の普及どころか、土木・建築においては、印紙を貼る業者が皆無だったこと、今は、それらの違法な人夫出し業者すら消えてなくなってしまったことを突きつけら、だからこそ公的就労対策が必要だということが突きつけられ、役人共はグウの音も出ない。ある港湾の業者の「一四日だけ働いて、あとは手帳で金をもらっての生活でもいいんですよ」という声もぶつけられる。三〇年前の仕事がある当時における、本省との団体交渉の席上、一〇〇余りの求人業者の載るスポーツ紙を見せられ、そのうち一社程度しか「日雇い雇用保険」に加入してはいない実態を突きつけられ、それでも何もしようとしないできていることを突きつけられても、雇用保険係長は言葉を発せない。
「民間雇用の拡充」という空文句を繰り返されても、実態は仕事がないことに変わりはない。仲間から「駅前に朝五時半に行くと日帰りの熊本の被災地での解体の仕事が出てきた。帰りは夜の八時になる。しんどいけど働くしかない」という実態が突きつけられ、ますます役人共は声が出ない。「生活保護は最終手段」と訴えた仲間の声に続けて、生活保護を取ったとたんに、自殺したり孤独死を強いられたりという実態もぶつけられる。さらに「生活保護になじんだら、仕事をする意欲がなくなってしまう仲間を多く見ている」という声もぶつけられる。生活保護を取っている仲間たちには、仕事なぞありはしないのに、行政からは「仕事を探しなさい」という声だけが執拗に浴びせられること、そんな非現実的なやり方ではなく、生活保護の仲間たちにも公的就労対策事業の仕事ができるようにすれば、仲間たちといっしょに仕事をすることで、生きがいも生まれ、次のステップに進む意欲も生まれることも突きつけられる。もう、役人からは、何の言葉も出ず、ただただうなずき続けるしかない。しかも、観光とイベントをメインに収益を上げるという福岡市においては、清掃などの簡単な仕事を作ろうと思えば、いくらでも作ることができることが一つ一つの具体例をもって提示された。「イベント会場の横の道路の踏みつぶされた銀杏の臭いこと。こんな仕事誰もやりたがらないよ。われわれだったら、喜んでやるよ」、「外国から来た人たちが船を降りて、まっ先に目にする光景はゴミだらけ」、「市役所の前のオープントップバス乗り場のドブ臭さ」、「中洲もゴミだらけで汚い」等々、さらに「福岡市の市場の掃除とかだって、いくらでもある」と、挙げたらきりがない。国も自治体行政も日雇い・野宿の労働者の声を聞こうとせず、ただサボり続けている実態が浮き彫りになるばかりだ。福岡市には、われわれの声を聞く部署すらないということも突きつけられた。
東京都の「公共事業への日雇い労働者吸収要綱」のようなものを県に作らせることが必要である。求人条件を「即決」、「日払い」、「年齢制限なし」にさせなければならない。これらのことを徹底的に突きつけて、交渉を終えた。