4・21
「ノーモアJR尼崎事故、生命と安全を守る集会」とデモが闘われる
小田地区会館で集会
2005年4月25日、107人の命を奪い562人の負傷者を出した「JR尼崎脱線 事故」が発生し、今年で13ヵ年を迎えた。
4月21日、「ノーモア尼崎事故、生命と安全を守る集会実行委員会」主催で、尼崎での集会と事故現場への追悼デモ・献花行動が取り組まれた。
午後2時から、JR尼崎駅のすぐ近くにある小田地区会館で、多くの闘う労働者の結集で集会が開始される。
まずは、国労近畿の東幹夫氏より基調提案が行なわれる。「小さなミスでも個人責任を追及し会社への徹底した服従を強いる『日勤教育(=勤務外し)』などの労務管理、他の私鉄からの利用者を奪うため30秒の遅れも許さない『回復運転』という制限速度ギリギリの運転、休みも充分に取れない慢性的な要員不足、『タコ足食い』とよばれた増収活動強要などが、ものの言えない職場をつくり尼崎脱線事故の大惨事を起こしたといわれています」「事故後2009年7月に山崎元社長が起訴された『業務上過失致死傷罪』の公判が始まりましたが、JR側は『隠蔽・虚偽』の証言に終始し、関連して起訴された歴代三社長の判決も含め神戸地裁・大阪高裁共に無実を言い渡しました。あの大事故すら誰一人罪を問われなかったのです」「尼崎事故後、JR西日本は上位下達を廃し風通しのよい会社づくりをスローガンとして掲げました。しかし、現場においては元の状態に戻るには時間はかかりませんでした。非番日や休日の居残りが増え『増収活動』が強要される、年休の取れない職場、契約社員等『非正規』労働者の拡大、保線・電気職場の見張りや検査業務の外注化などの合理化は際限がありません」「これらの合理化や労務管理の結果、昨年12月11日に起こった『のぞみ34号』の事故は、車中で異音・異臭・モヤが発生し、車両保守担当者が床下点検を打診したにもかかわらず、名古屋駅まで走行させ、その後台車の亀裂が発覚するという脱線寸前の事態でした。『あと3センチで台車破断』というこの事故は、まさに起こるべくして起こった事故だったのです。この事故で、規制緩和が拡大して以降の検査周期延伸や、検査箇所の省略、徹底した外注化と技術継承を怠ってきた側面と、異常があったにもかかわらず止めなかった『安全より儲け優先』という会社の姿勢が浮き彫りになりました。今後明らかになるであろう製造過程の問題とともに、JR西日本の監督責任は追及されねばなりません」「この13年の集会の中でのJR労働者からの訴えによって、『効率化という名の合理化で社員数も国鉄時代の半分以下、40歳代が空洞のいびつな年齢構成で技術継承も深刻』『重要な業務はグループ会社などに外注化され、そこでも長時間過密労働と休日出勤・サービス労働が蔓延している』『職場は労働者個人に責任を押し付ける労務管理が復活し、事故や異常時を無視した要員削減で安全の切り捨てが際限なく行なわれている』などの実態が明らかになりました」「今、産業を超えた連携は、ますます重要となっています。『ノーモアJR尼崎事故・生命と安全を守る集会』を事故の教訓を決して忘れず、首切り・民営化・規制緩和に反対する多くの労働者の闘いとより強く連帯し、共に闘いに起ち上がる決意を持ち合う集会としていきましょう」。基調の提案は、会場全体で確認された。
続いて、「遺族からの訴え」として藤崎光子氏から、「あの事故から13年がたち、世間で話題になることが少なくなった。しかし、JR西日本は、昨年の12月に『のぞみ34号』の重大事故をおこした。JR西日本が13年前の列車事故から何も学んでいないからだ」「JR西日本は、他のJRと比べて人身事故が多い」「107人を殺しても、JR西日本の責任は全く問われない。企業の罰則化を実現させ、JR西日本の事故への責任を追及していく」との発言がなされた。
事故現場への追悼デモと献花行動
「脱線事故から13年―JR西の企業体質は」と題して、「新聞うずみ火」代表の矢野宏氏より記念講演が行なわれる。矢野氏は、「福知山脱線事故は、運転士のブレーキ操作が遅れたのが原因とされているが、事故の背景には、懲罰的な日勤教育や、過密ダイヤ、現場カーブに安全対策のための新型ATS(自動列車停止装置)すら設置されていなかったなど、安全よりも営利を優先するJR西日本の企業体質があった。これこそが問題だ」「JR西日本の企業体質が変わらないからこそ起こったのが、昨年12月の『のぞみ34号台車亀裂事故』だ。JR西日本は、台車検査を30万キロから、45万キロ、そして60万キロに延ばしている。特に、新幹線N700系の検査期間についても、『30日、又は3万キロを超えない期間』で検査をすべきとしていたのが、この間のダイヤ改正で『45日、または6万キロを超えない期間』で行なうと変えられている」「JR西日本は、検査の責任を川崎重工だけに押し付け、安全より儲け優先の企業体質を変えようともしていない」「労働者一人一人が、勇気を持って、おかしいことは、おかしいと声を上げれば変えることができる」。
「JR北海道のローカル線切り捨てと安全の危機」として、鉄道安全問題研究会の地脇聖考氏は、「2016六年11月、JR北海道は、10路線13区間について『JR単独では維持が困難』と公表して1年半が経った。JR北海道は、自治体に事実上不可能な負担を求める『上下分離』や『バス転換』などに向けて協議したいとして、JR北海道、JR貨物、国、北海道沿線市町村を交えた協議を行なっている。道内鉄道網の在り方を集中審議している道の『鉄道ネットワーク・ワーキングチーム』は、JR北海道が「単独では維持困難」とする10路線13区間を重要度別に格差をつけ、重要度の低い路線については『廃線を容認する』との内容の報告を公表している」「災害時に備え、複数の輸送ルートを常に確保しておくことが危機管理の意味からも重要だが、貨物輸送上の重要ルートさえ、JR北海道は『乗客が少ない』ことを理由に廃止―バス転換を提案している。こうしたJR北海道の姿勢は大局観を欠いており、また旅客輸送と貨物輸送を別会社に分離した国鉄分割・民営化の明らかな弊害である」「北海道の鉄道は、通学・通院など日々の道民の暮らしに直結している。北海道の鉄路の存続・再生と、地域の発展のために今後も行動していく」。
「JR西日本の安全問題―鴫野駅ホーム転落問題と要員配置運動の前進」として国労大阪の松崎和彦氏は、「2015年3月29日に、新ホームが開設されたが、約1年半で、利用者が列車とホームの隙間に転落する事故が21件も発生している。こうした事故を防ぐために、ホームへの係員の配置が必要だ。この間、地域の人々、学校関係の方々などへ、鴫野駅ホームへの係員の終日配置を求めるための署名活動に取り組んでいます。昨年の5月、集まった署名を持って、大阪支社へ陳情に行き、9月に団体交渉を行なった」。
「リニア市民ネット」は、「リニア新幹線は、速度最優先で、安全性を軽視している」「東京と大阪の間を一時間、速度500〇キロを実現するために、大量の電気を利用して、車体を浮かし、東京から南アルプスを貫く、真っ直ぐなルートを通る」「南アルプスの自然を破壊し、岐阜県の東濃地域にある日本最大のウラン鉱床を通過させるのだが、その残土を持って行く場所すら決まっていないのに、強引に工事が進められている」「本来スピードを出すのであれば、安全性を確保しないといけないが、JR東海はその安全性すら考えていない」と報告した。
最後に、「JAL不当解雇撤回争議団からの訴え」としてJAL争議団からの発言をうけて、午後4時50分、事故現場への追悼デモが開始される。事故現場に到着後、デモ参加者による献花行動が行なわれた。参加者は、「二度と事故を起こさせない。生命と安全を守るために闘っていく」という決意をかため、この日の行動を終えた。
〈反戦・反失業を闘う釜ヶ崎労働者の会〉