4・18東京「君が代」裁判4次訴訟控訴審判決公判闘争

戒告処分を容認する判決を許さず闘う決意を固める当該と支援者
戒告処分を容認する判決を許さず闘う決意を固める当該と支援者

4・18

東京「君が代」裁判4次訴訟控訴審判決公判闘争

 

東京高裁で4次訴訟控訴審判決

 

 4月18日、東京「君が代」裁判4次訴訟控訴審判決公判が、午後1時10分から824号法廷(東京高裁第12民事部)で行なわれた。傍聴席が、原告、支援者で埋められる中、裁判長・杉原は、「原告(被処分者)、被告(東京都教育委員会)の控訴をいずれも棄却する」と主文のみを言い渡し、一審判決を維持した。「減給処分」は違法である、しかし、「戒告処分」は容認するというものだ。

 裁判所前では、支援の仲間が集会を行なっており、判決の一報が入り、「一部勝訴」「減給処分は違法」「都教委を断罪」という幕が出される。法廷から合流した原告のTさんは、「『戒告処分』が取り消されなかったのは残念だ。私の『減給処分」については、訴えが認められたが、処分撤回まで闘う」と決意を明らかにした。他の原告も、闘いぬく決意を表明し、弁護士の一人は、「『減給処分』は違法と明確にした。都教委は地裁判決に続き、敗れたことを恥じるべきだ」とした。

 この後、午後3時から、司法記者クラブでの記者会見と並行して、弁護士会館で報告集会が行なわれた。

 報告集会は、記者会見を終えて途中から合流した原告、弁護団を含めて、7人の原告、7人の弁護士と多くの支援者が参加して行なわれ、原告の多くは「『戒告処分』が取り消されなかったのは、悔しい。しかし、Tさんの『減給処分』取り消しを維持したのは、ほっとした」と発言し、弁護団は「都教委の暴走に歯止めをかける判決だ。これを足掛かりに『懲戒処分』そのものの取り消しを求めていこう」と闘いの方向性を示した。報告集会の最後に、行動提起が行なわれ「『日の丸・君が代』不当処分撤回を求める被処分者の会(被処分者の会)」が、「4月23日、都教委に対して、高裁判決を受けての請願行動を行なう。再処分攻撃を許さず、都教委の不誠実な対応を徹底追及する行動に参加を」と呼びかけた。

 東京高裁の判決を受けて、4次訴訟原告団・弁護団は、声明を発した。声明は、「都教委は……教職員に下した全ての懲戒処分を撤回するとともに,将来にわたって一切の『国旗・国歌』に関する職務命令による懲戒処分及びそれを理由とした『服務事故再発防止研修』を直ちにやめるべきである」「都教委がした違法な懲戒処分が取り消された事実を重く受け止め,原告らに対して重ねての懲戒処分はやめるべきである」というものだ。

 4月18日、都教委は、3月の卒業式で「君が代」斉唱時に起立しなかったことを理由に都立高校教員1人に対する懲戒処分(不起立3回目に対し戒告)の発令を強行した。この処分により「10・23通達」に基づく被処分者数は、延べ483人となった。都教委は、処分発令に伴い、被処分者に対して、3ヵ月にわたる「再発防止研修」を強行しようとしている。断じて許してはならない。

 また、都教委は、「10・23通達」による処分にとどまらず、デタラメな処分を乱発している。都教委は、2014年7月、都立高校の教員Oさんを、「担任の女子生徒に不適切なメールを送った」などとして懲戒免職処分とした。Oさんは免職処分取り消しを求め提訴し、2015年10月、東京地裁、2016年3月、東京高裁でそれぞれ、免職処分取り消しの勝訴判決をかちとった。都教委は、この判決に対し最高裁に上告せず、判決は、確定した。しかし、都教委は、謝罪するどころか2016年5月に、改めて停職6ヵ月の処分を出しなおした。Oさんは、再び東京地裁に提訴し、4月25日の判決で、停職6ヵ月の処分(再処分)を取り消す判決をかちとっている。

 

「日の丸」「君が代」強制へのさらなる闘いを

 

 4月23日、都庁25階の会議室において、都教委への請願行動が行なわれた。多くの当該と支援が結集する中、窓口である教育庁総務部教育情報課に対して、請願書と要請書が突きつけられる。請願書は、「被処分者の会」と東京「君が代」裁判原告団によるもので、「東京高裁判決を真摯に受け止め、最高裁に上告しないこと」「判決が確定した場合、再処分(現職教員に改めて戒告処分を発令すること)をしないこと」「『10・23通達』を撤回すること」「『10・23通達』に係わって懲戒処分を受けた教職員を対象とした『服務事故再発防止研修』を行なわないこと」など11項目を突きつけた。

 要請書は、同じ団体名で「卒業式処分に抗議し、その撤回と『再発防止研修』の中止を求める」とするものである。要請内容は、「一、4月18日付で東京都教育委員会が発令した卒業式に係わる戒告処分を撤回すること。二、上記に係わる『服務事故再発防止研修』を行なわないこと」の二点である。

 約1時間に渡り、請願書と要請書をめぐって都教委を追及する闘いが行なわれた。教育庁総務部教育情報課は、「(自分達は、)ただの『窓口』であり、内容をめぐって追及したり、論争するものではない」とする居直りを決めこんだ。ここにも都教委の不誠実な態度が表われている。都教委を徹底して追及しなければならない。

 東京「君が代」裁判とは、都立学校での卒・入学式、周年行事で「日の丸」「君が代」を強制する内容の2003年「10・23通達」に抗議・抵抗して、不起立・不伴奏を貫いた教育労働者が原告となり、東京都教育委員会に対して処分の取り消しと処分発令によって被った精神的損害への賠償を求めて提訴した裁判だ。

 2007年2月7日に、172人が提訴した1次訴訟は、2009年3月26日に、東京地裁で、「全面棄却」判決(中西判決)、2010年3月10日に、東京高裁で、全員の「処分取消」を命じる逆転勝訴判決(大橋判決)、2012年12月12日に、最高裁で、「①国歌起立斉唱の職務命令は、憲法19条違反ではない②不起立等の行為をした者に対する戒告処分は、違法とは言い難い③戒告1回の処分暦があることのみを理由に減給処分を選択した都教委の判断は、裁量権逸脱濫用による違法」とした。

 2007年9月21日に、67人が提訴した2次訴訟は、2011年7月25日に、東京地裁が、「全面棄却」判決。2012年10月31日に、東京高裁が、「減給以上のすべての処分を裁量権逸脱濫用による違法」として取り消し、戒告処分はすべて是認。2013年9月6日に、最高裁が高裁判決を維持し、22件の減給、停職処分を取り消す判決を下している。

 2010年3月2日に、50人が原告となって提訴した3次訴訟は、2015年1月16日に、東京地裁が、「原告26人の減給・停職処分について裁量権逸脱濫用による違法を認定して取り消し、戒告処分は適法、国家賠償請求は全件を棄却」とした。2015年12月4日の東京高裁判決は、一審判決を維持。2016年7月12日、最高裁は、高裁判決を維持し、判決は確定した。

 4次訴訟は、2014年3月17日に14人が提訴した。2017年9月15日、東京地裁での判決は、6人・7件の減給、停職処分の取り消し、戒告の取り消し請求は棄却、全原告の国家賠償請求を棄却するというものであった。被告・都教委は、減給処分取り消しの1人・2件についてのみ控訴し、その他の減給、停職処分については取り消しが確定していた。

 「日の丸」「君が代」強制と対決する教育労働者と連帯し、安倍極右政府が推進する「教え子を戦場に送り出す教育」、教育の国家統制強化攻撃と対決していこう。

                           〈東京・山谷日雇労働組合〉