全国寄せ場で盛大に夏祭り

8・13~15山谷夏祭りの大成功をかちとる

炊き出しで腹を満たし、ゲームに興じる労働者(8/14)
炊き出しで腹を満たし、ゲームに興じる労働者(8/14)

8・13~15 山谷夏祭りの大成功をかちとる 

 

                    東京・山谷日雇労働組合

 

 7月26日に「実行委員会」を結成、「反戦・反失業」を闘う団結めざし夏祭り準備に突入

 

 8月13日から15日までの3日間、山谷・玉姫公園を会場にして、東京・山谷日雇労働組合(東京・山日労)が呼びかけた「2018年山谷夏祭り実行委員会(実行委員会)」によって山谷夏祭りが開催された。

 東京・山日労は、2018年前半期の格闘と地平を多くの山谷労働者と共有し、さらに2018年後半の闘いが、秋の臨時国会での改憲をめぐった攻防が一挙に強まることが予想される中、闘う山谷労働者の部隊をさらに強化・拡大するためのステップとして山谷夏祭りに取り組むことを決定し、7月26日に「第1回実行委員会(結成会議)」を広く呼びかけた。

 2018年前半期の闘いを共に担いぬいた労働者が多数結集して、「結成会議」は開催された。「結成会議」では、山谷夏祭りの基調を簡潔に表現した「『2020年オリンピック』を口実にした日雇い・野宿労働者の排除を許さんぞ」「『働き方改革』を粉砕するぞ」「改憲攻撃を粉砕するぞ」「『反戦・反失業』を闘うぞ」「戦争国家作りを許さんぞ」「安倍政府を打倒するぞ」などの「2018年山谷夏祭り」のスローガンが確認された。その後、「本部」「炊事」「設営」などの班編成が行なわれ、長年の経験を蓄積している労働者を中心に、炊き出し、屋台、ステージ企画などの準備にむけた会議が行なわれていった。

 夏祭りの準備は多岐にわたる。山谷労働者の現場での経験を活かしたステージ設営にむけた設計や資材の見積もり、工程の計画作りもあれば、アブレ(失業)―野宿生活を強いられながらも、玉姫公園で旧友と出会い、日頃の栄養不足を補う炊き出しへの期待に応えるメニュー作り、日頃の疲れを癒す笑いを呼び起こすようなゲームや「実行委員会」の企画、山谷労働者との結びつきを大切にし、越年・越冬と夏祭りには欠かさず出演してくれる「東京大衆歌謡楽団」との連絡・調整、そして、もっとも重要なのが、3日間の炊き出しや物資輸送、資材購入のための資金作りだ。やることは山ほどある。

 まさに、山谷夏祭りの準備過程は、闘いつつ、さらに山谷労働者の団結を強め、闘いへの結集を拡大するための、日頃の活動とは違った苦労がある。だが、「実行委員会」に結集した山谷労働者は、38度を超す気温のなかで、すべての準備を整えていった。「闘う仲間を増やし、闘いを前進させる」という確信がなければ、なかなかできないことだが、「安倍を打ち倒す労働者の団結と闘いを作るんだ」という決意にあふれた山谷労働者たちによって準備は、進められていった。

     東京大衆歌謡楽団の懐かしい歌を楽しむ(8/15)
東京大衆歌謡楽団の懐かしい歌を楽しむ(8/15)

8月13日、玉姫公園で夏祭りに突入

 

 山谷夏祭りの初日である8月13日、東京・山日労と「実行委員会」の労働者は、日頃、労働相談―机出し活動を行ない、「城北労働・福祉センター(センター)」による「立て看」撤去策動をはねのけて山谷労働者に闘いへの結集を呼びかける看板が設置されている「センター前」に結集し、一団となって玉姫公園への移動を開始する。ことあれば弾圧しようと監視する警視庁浅草警察の私服デカは、労働者の勢いに圧され、何の手出しもできない。玉姫公園では、東京・山日労が呼びかける山谷夏祭りのビラを見て、手伝いをしようと多くの山谷労働者が「実行委員会」の部隊の到着を待っている。午前7時過ぎから玉姫公園のゲートが開かれ、準備作業が始まる。

 今年の山谷夏祭りの準備で、例年と大きく違ったのが「猛暑対策」だ。昨年の夏も暑かったが、今年の暑さは「殺人的」だ。実際、山谷労働者が就労する「特別就労対策事業」の現場では、日頃の栄養不足、睡眠不足もあるだろうが、熱中症で救急搬送される労働者が相次いでいる。そんな中での準備作業になるため、「実行委員会」は何度も検討を重ねていった。そして、例年はすべて建設現場で使う足場材で作っていたステージの床部分をプラスチックパレットを積み上げることで作業時間の短縮を図った。1枚20キロの重量があるパレットの搬入は、玉姫公園近くの事業所が「うちのフォークリフトで運んでやるよ」と快く引き受けてくれた。山谷労働者の日頃の苦労を間近で見、山谷労働者が山谷夏祭りを楽しみにしていることを知っている人たちからの嬉しい協力だ。

 さらに今年は、設営作業や炊き出しの切り込み作業の場所にスポット・クーラーが設置された。決して安くはないレンタル費用だが、例年に増して「山谷夏祭りを成功させてください」という一筆とともに送られてきた資金カンパによって、これらの「猛暑対策」ができることになったのだ。

 そして、午後5時、玉姫公園のゲートが開かれ、公園の外周で待っていた300人を超える労働者が、一斉に入ってくる。炊き出しを受け取る労働者、無料のカキ氷、無料のウーロン・ハイのテーブルに向かう労働者、東京・山日労に送られてきた支援の衣類を選ぶ労働者によって、玉姫公園は埋められていった。

 山谷夏祭りを楽しみにしてきた労働者によって、玉姫公園が埋め尽くされる中、東京・山日労の労働者がステージに立ち、2018年山谷夏祭りの開会を宣言する。「国会で『働き方改革』の法律が強行成立した。労働者の権利を否定するような風潮が強まっている。インターネットの番組では、山谷労働者が就労している『輪番』の仕事を、隠しカメラ、隠しマイクを使って取材し、『山谷労働者が甘い汁を吸っています』なぞという、予断と偏見を煽るようなコメントを流している。1週間に1日だけの『輪番』の仕事のどこが『甘い汁』なのか。『2020年オリンピック』が近づくにつれ、山谷の日雇い労働者、野宿する労働者を排除する動きが強まるだろうが、山谷夏祭りのために力を合わせてきた労働者の団結があれば、跳ね返すことはできる。安倍は、秋の臨時国会で改憲にむけた動きを一気に強めるだろうが、『反戦・反失業』の闘いをさらに強め、改憲と戦時国家体制作りを粉砕していこう」。

 続いて、同じ時期に夏祭りを開催している全国の寄せ場からの連帯メッセージが紹介される。「反戦・反失業を闘う釜ヶ崎労働者の会」、福岡・築港日雇労働組合、沖縄・首里日雇労働組合からのメッセージだ。

 

山谷夏祭りの成功を寄せ場労働運動の前進へ

 

 開会の集会が終わると、第1日目の企画が始まる。恒例のビール早飲みに加えて、今年は、アルコールが飲めない労働者や、子どもたちも参加できるように、ラムネ早飲みも行なわれる。早飲み競争のはずだが、参加者の中には、日頃飲めない冷え切ったビールをゆっくり堪能する労働者もいる。ラムネびんの中のビー玉に邪魔されてびんを空にすることに苦戦する労働者がいる。中には、「何十年ぶりのラムネだ」と言い、味わって飲む労働者もいる。ステージの上で繰り広げられる参加者の様々な仕草が、玉姫公園に集う労働者の笑い誘う。玉姫公園を笑いの渦にした企画に続いて、カラオケ大会が開始される。日頃は無口に見えていた労働者が以外な曲目を選んで歌い、観客から驚きの声が出たり、「飯場で稼いだ金を全部カラオケスナックに注ぎ込んだな」といった野次を誘う。その後は、映画・「山谷(やま)―やられたらやりかえせ」の上映だ。山谷通りで労働者が機動隊とぶつかる場面では、「あの時、俺もいた」と自慢する労働者がいる。当時を知らない山谷に来たばかりの労働者からは、「凄いな」という驚きの声が漏れる。こうして、山谷夏祭りの初日は、玉姫公園に集った労働者が腹一杯食べ、屈託なく笑うことができる夏祭りとして盛況のうちに終了時間を迎えていった。

 2日目は、午後5時からの炊き出しから始まり、企画としてスイカ割り、カラオケ大会が行なわれた。例年のように、スイカ割りでは客席を迷走する選手から観客が逃げ惑う場面があったり、一発で割る選手に拍手が起こったりといった場面が続いた。

 山谷夏祭りの最終日である8月15日は、多くの山谷労働者が心待ちにしていた「東京大衆歌謡楽団」が出演する日だ。山谷夏祭りに出演することを楽しみにしている「東京大衆歌謡楽団」からは、「綱引き大会の景品にしてください」と、大型クーラーボックス一杯の冷えたビールが差し入れされた。今年も「山日労一座」が迷演を繰り広げる寸劇が行なわれ、「輪番」の仕事を潰すような番組に対する山谷労働者の怒りを表現していった。綱引き大会には、差し入れた当の「東京大衆歌謡楽団」のメンバーも飛び入り参加し、力の入った熱戦を繰り広げた。「東京大衆歌謡楽団」のステージでは、「二度と戦争による苦労がないように」という気持ちを込めた歌も歌われ、皆が一緒に歌った。そして、締めくくりは、「総踊り」として盆踊りが行なわれ、大きな輪ができた。

 3日間の山谷夏祭りは、「山谷は、俺たち日雇い労働者の町だ」「日雇い労働者の夏祭りを成功させよう」と頑張る労働者が奮闘し、大きく盛り上がった。また、「非正規雇用」からさえ弾き出され、「特別就労対策事業」を頼りにして山谷にたどり着いた若年層の労働者が、山谷の闘いの歴史に触れる機会にもなった。東京・山日労が様々な産別労働者の闘いに足を運ぶことで山谷との縁を深くした労働者からの支援カンパも昨年以上に増えた。玉姫公園の本部席に置かれたカンパ箱には、多くのカンパが寄せられた。安倍政府による労働者使い捨てに対する怒り、改憲攻撃に対する怒りと、「反戦・反失業」を基調にして闘う東京・山日労への期待が大きく広がっていることを感じさせる夏祭りであった。東京・山日労は、この成果を寄せ場労働運動の更なる飛躍・前進、階級的労働運動の前進・拡大、安倍政府打倒にむかう隊列の拡大に結びつけることを決意している。