第Ⅱ部 講演 「関西地区生コン支部の労働運動と弾圧との闘い」

 関西地区生コン支部の闘いについて講演する武谷氏
 関西地区生コン支部の闘いについて講演する武谷氏

Ⅱ部

 

講演「関西地区生コン支部の労働運動と弾圧との闘い」

 

全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部書記次長

武谷新吾氏

 

「恐喝未遂」とか、「威力業務妨害」という罪状で延べ56人が逮捕

 

 関西生コンの武谷です。本集会に参加されている皆さんの現場での闘いに敬意を表します。去年から始まった関生支部の弾圧に対して、物心両面にわたるご支援をいただき、本当に感謝しています。

 関西生コンの運動への弾圧は、去年の7月から本格的に始まりました。お配りしてあるリーフレットに詳しいことは書いてあります。大阪府警と滋賀県警によって、「恐喝未遂」とか、「威力業務妨害」という罪状で延べ56人が逮捕されています。

(略)

 今回の弾圧は、ストライキが起点になっています。2年前の12月12日に、関西でゼネストをやりました。生コン屋さんは、セメント、砂利、砂を水で練って、それをミキサー車に積んで建設現場に納入します。そのミキサー車は、セメントメーカーの思惑で、生コン工場は持っていません。輸送専属の別会社を使っています。輸送専属の会社で運転する労働者は、運賃が上がらなければ、賃上げの原資もなく、雇用も安定しませんから、運賃を上げる約束を取り交わしたんです。その約束を守らなかったから、ストライキをしたんです。生コン産業は、「間(はざま)産業」と言われています。何故かというと、大資本のセメントメーカーは、麻生、三井、三菱、宇部など、昔の財閥です。安倍政権を取り巻く人たちのお家柄みたいです。セメントメーカーからセメントを言い値で買わされ、買い手のゼネコン、大林組、竹中工務店、清水建設、鹿島というところからは買い叩きをされます。生コンの単価は、あって、ないようなものなんです。1970年の万博が終わった時、国が「建設はもうやらない」と言いだした。それまでは、100の生コン会社があれば、120くらいの仕事があったんですが、通商産業省から生コン業界が「構造不況業種」に指定され、「生コン工場を減らしなさい」と言われた。「減らすのはいいけど、補償はあるんかい」と言うと、「それは出さない」と言う。今でも「構造不況業種」と言われています。そうなれば、仕事を取るために、ダンピングをやる。その時、関西生コンの先輩たちは、弱者である生コン会社に協同組合へ結集してもらうようにしました。「協同組合事業法」という法律があって、独占禁止法に抵触しない。50から60の会社が協同組合に入ると、価格を決めることができる。適正価格で生コンを販売することができる。それをやって、自分たちを雇用している会社のパイを増やした上で、賃上げをかちとる。こういう運動が1974年くらいから始まっています。

 

「資本主義の根幹を揺るがすような運動は箱根の山を越えさせるわけにはいかない」

 

 1980年に、大阪府と兵庫県で「生コン工業組合」という団体に約300社が結集しました。その団体との集団交渉で、300社の代表と労働組合の代表が賃上げと一時金のアップ、福利厚生をめぐって交渉しました。要は、ゼネコンから買い叩かれないように、対等に交渉ができるようにして、セメントメーカーの一方的な値上げに対して対等に交渉して、「協同組合」や「工業組合」を窓口にして共同購入しようという決定をして、大きく成果があがりました。この時に、「100億円基金構想」ができました。生コンは、1立方メートル、1立米(りゅうべい)単位で1万5000円などの価格でゼネコンに売ります。そのうちの100円を労働者基金として労働組合に預けておくようにした。アメリカの運転手の組合である「チームスターズユニオン」ができた時に、労働者年金のシステムを作ったのを習ったのかと思います。貯めた100円を何に使うのか、自分たちが直接雇用されている業者は中小企業、零細企業ですから、退職金の制度を作っても、退職金を貯めているかどうか分からないから、その基金から出そうというものです。それと、「生コン産業老人ホーム」「生コン産業福祉施設」、今で言うと介護施設ですが、そういうのを作ろうということで立米あたり100円を拠出させていました。

 「構造不況業種」とされ、業者を減らさないといけない。私たちは、「雇用のことを第一に考えてくれるのであれば、協力しよう」というふうにしました。当時の共産党系の組合は反対しました。「合理化を経営者と一緒にやるのはダメだ」と言っていました。その時に、協定書は、一つは、「山口生コンは閉鎖するけど、運転手は武谷生コンで引き取りなさい」。それと「山口生コンの閉鎖に伴い、高齢で引退する労働者には1年分の年収と退職金の150パーセントを払って退職してもらう」。「武谷生コンが『山口生コンの10人全部を引き受けることができない。5人しか引き受けられない』という時は、残りの5人は、次の仕事が見つかるまで平均賃金を保証する」という「連帯雇用保障制度」を作りました。それは、労働組合がある会社だけでなく、労働組合がない会社にも同じように適用させました。他にも、年間休日の日数について、「完全週休2日にすれば、ゼネコンもそれを考えた工期にするだろう」ということで協定を結びました。

 この時に一発目の大きな弾圧がありました。1982年、こういった大阪、兵庫の運動が名古屋に広がり、東京にまで来ました。当時、「東京地区生コン支部」がありました。この時に、当時の「日経連」、今の「経団連」の会長であり、三菱鉱業セメントの会長でもあった大槻文平が、「こんな関生の運動は、認められない。資本主義の根幹を揺るがすような運動は箱根の山を越えさせるわけにはいかない」と、「日経タイムス」に発表しました。大阪に東淀川区というところがありますが、その東淀川警察署に50人の専従で「関生対策班」が作られました。50人の専従が十手を持って、経営者を脅しに来ました。何を脅したかというと、労使紛争が起きたり、不当労働行為をやったらペナルティとして解決金がありますが、その解決金の協定書を引っ張り出して、「お前、武谷に脅されたんやろ。脅されて印鑑ついたんやろ。被害届を出せ。恐喝が成立するから」と、事件を作るようなことをしたんです。一番最初に「事件」になったのが、「協同組合」「工業組合」に週休二日制を約束させたことです。大阪の岸和田などがある阪南地域の「協同組合」が、抜け駆けをしました。ゼネコンと警察から煽られたんだと思います。土曜日に6工場が稼働したんです。当然、われわれは、「約束違反やないか、協定不履行やないか」と抗議行動に行きました。「今後、二度としません」と謝罪文を書かせて、実損を回復するために解決金を取りました。そのことが「恐喝」とされ、26人が逮捕されました。今と違うのは、22日間勾留され、起訴されても、23日目には保釈されてシャバに戻ってきました。この弾圧の時は、「運輸一般関西地区生コン支部」という名前だったんですが、共産党系の労働組合が、「赤旗」という新聞に「関西で、一部、道義に反するような下部組織がある」という記事を書いたため、分裂しました。警察からすれば大喜びです。共産党と警察、検察、裁判所からの弾圧があったのが特徴でした。

  2017年12月12、13日に闘われたストライキ
  2017年12月12、13日に闘われたストライキ

滋賀の事件も、最初に経営者を6人逮捕

 

 この時は、経営者も逮捕されました。今回の滋賀の事件と似ています。滋賀の事件も、最初に経営者を6人逮捕しています。その後、関生の組合員をどんどん逮捕していきました。1982年の弾圧の時は、経営者がすべて無罪になっています。結局、この時に組合は分裂し、3500人居た組合員が1500人になりました。経営側は、セメントメーカーが「やおい会」という労務窓口を作り、労働組合への対応組織を作って今まで積み重ねてきた労働条件をどんどん切り下げました。「そんなもん、週休2日制なんかあるかい」「残業保証はすべてなし」と、どんどん切り崩されるということがありました。しかし、そういうことがあっても、先輩たちは粘り強く、ヨーロッパのような産別運動を進めていこうとやってきました。

 その10年後、1994年に再び「協同組合」を結集させ、現在の「大阪広域生コンクリート協同組合」にしました。大阪にあった4つの「協同組合」を合併させました。この時の合併の話は、経営側から来ました。関西地区生コン支部への弾圧があってから、生コンの価格の下落が進んだんです。1万3800円まで上げた価格が、1982年の弾圧の後には、1万円を割るようになったんです。1980年代の末には、8000円台にまで下がった。それで経営側が「関生さん、ちょっと協力してくれへんか」と言って来た。われわれは、「協力するのはいいけれど、80年代に約束したことを守れよ」と言いました。経営側は「守る」と言ったんで、協力して「大阪広域協組」が1994年にできました。

 「協同組合」に入ってない生コン工場もあります。「協同組合」の単価が1万4000円だったら、1000円か2000円下げれば、それが売れます。そういったアウトサイダーが2000年くらいから実力をつけてきました。それをほったらかしにすると、今まで築き上げてきた生コン価格や労働条件がひっくり返されるかもしれない。それで、有力なアウトサイダー企業を「広域協組」に入れようという運動をやりました。そのことが、私が逮捕された「威力業務妨害」と「強要未遂」とされ、大きな弾圧でした。その時、誰が得したかというと、ゼネコンです。1994年からもう一度巻き返し、2000年代からは土曜日を休みにしたし、価格も上げたんですが、2006年には9000円台になってしまった。武委員長は、1年4ヵ月くらい勾留され、出てきて、めげずに「しっかりやりなおそう」と言いました。

 

「麻生セメント系の武谷生コン、山口運送の日雇いの運転手さん」を「正社員」にしたり、不当解雇した時には、セメントメーカーに損害賠償を求めた

 

 今回の弾圧の起点になる2015年、今から4年前に、また経営者が来て、「大阪大変ですわ、また9000円台になってしまって、このままやったら倒産になるんで、協力してくれまへんか」と言う。われわれは、「80年代、90年代の約束をちゃんと守れよ」と言いました。経営側は「守ります」と言う。しかし、言葉では信用できない。今まで2回裏切られてきているから。それで、「今回はまず100円払え」。労働者基金ですね。これについては、経営側は、「わかりました」と返事しました。それと、「生コン価格が戻った時には、出入り業者の運賃を上げろ」と要求しました。この二つを約束するのだったら協力することにしました。何故、出入り業者の運賃を上げることに集中したのか。もともと生コンは、セメントメーカーがセメントを販売する手段です。1960年に日本で初めて東京で生コン工場ができたと聞いています。もともとは、例えば、住友大阪セメントの直系工場、麻生セメントの直系工場というかたちで、セメントメーカーと直接的な雇用関係だったんです。ところが、労働組合ができると不都合だから、セメントを売るだけにして、生コン工場は、別の法人にした。「住友セメントだけど、武谷生コン」というふうに。次には、生コン工場に労働組合ができると不都合だからということで、ミキサー車の輸送を分け、別法人にした。「武谷生コン、山口運送」というふうに。今度は、山口運送がやったのが、雇用責任から逃れるために、運転手を日雇い労働者にしました。運転手さんは、「日雇手帳、白手帳」を持って、1日働いて、印紙を貼ってもらうことになる。これに対して、僕たちの先輩は、セメントメーカーまで雇用責任を追及しました。それで、「麻生セメント系の武谷生コン、山口運送の日雇いの運転手さん」を「正社員」にしたり、不当解雇した時には、セメントメーカーに損害賠償を求めた。こういった闘いをストライキを背景にしてやりました。こういう運動は「かなわんなー」と思われたと思います。先輩たちは、こうやって使用者責任を追及する闘いをやってくれました。

 2015年に「立米100円」と、ミキサー車やバラセメント運搬車などの輸送業者の運賃を上げることを約束させました。経営者は、2015年の秋から、100円はすぐに払いました。ところが、出入り業者の運賃をなかなか上げない。それで、集団交渉の中で、「ミキサー車の運賃とタンクローリーの運賃を上げろ」と要求した。経営側は、「やりますやります」「生コンの値段が戻ったばかりで、まだ浸透していないから、もうちょっと待ってくれまへんか」と言う。2016年の春闘でも「上げろ」と要求すると、「上げます上げます。もうちょっと待ってくれまへんか」と繰り返す。それで、2017年の春闘で、「いつまで待たせるんや。もう3年経って、生コン価格も戻ってアップしているのに、約束不履行やないか」と交渉してきました。経営側は「秋に上げます」と言ってきました。ところが経営者は、利益が上がると「ノドもと過ぎれば」のことわざのように、今度は邪魔なのは労働組合だとなる。それで、また、先送りしようとしてきました。「もうあかん」と、関生は、一番忙しい時にストライキをわざとやります。盆とか正月の前とか。運賃を上げないのなら、12月にストライキに入ると通告した。ただ、譲歩案も示しました。それは「運賃値上げがすぐにできないのだったら、2018年4月から1台あたり1万円上げるとか、次の秋から2万円あげるとか」です。そういうことを書いた「覚書」ないし「確認書」を出せば、ストライキは回避すると言いました。12月12日まで待ったんですが、結局「覚書」すら出さなくて、ストライキに突入しました。このストライキは、4日間やりました。サービスステーションという、セメントを積み出す所を止めました。その結果、「大阪広域協組」以外は、成功しました。奈良、和歌山、滋賀、京都はすべて「運賃を上げます」と回答しました。ただ、大阪が頑強に「上げない」ということになり、「大阪広域協組」の一部は「上げます」と言ったのでストライキを解除したんですが、年明けぐらいから「関西生コンのストライキはストライキじゃない、業務妨害だ。犯罪者集団だ」というキャンペーンを張り、レイシストを雇っていろんな攻撃をやってきました。生コン価格が8000円から1万7000円に上がった「大阪広域協組」は、160社が集まり、体力もついていました。体力というのはお金があるということです。そのお金を背景にして、ヤメ検や警察OBをどんどん雇用して弾圧が入ってきました。

  関西地区生コン支部は弾圧を許さず春闘を闘った
  関西地区生コン支部は弾圧を許さず春闘を闘った

「阪神・淡路大震災」の時に倒れた高速道路の橋脚は、中の鉄筋が錆びていた

 

 2018年には、反撃もしました。集中した、ピンポイントでストライキをやったり、裁判所も活用しました。「大阪広域協組」が関生の組合員がいる工場に圧力をかけたこと、出荷を与えないとか、そういうことをやめさせる仮処分を出させました。また、関生系の組合員がいる輸送会社を使わないことをやめさせる仮処分を出させました。これは、「協同組合法に違反する行為だし、キチッと割り当てをしなければならない。一方的な契約打ち切りは無効だ」という仮処分が出て、そこから反撃の体制に入った時、7月に滋賀県警が弾圧に入ってきました。滋賀県警のやり方は、「恐喝未遂」ということで、滋賀の「協同組合」の経営者を四人逮捕しました。経営者は一致できるところで共闘しているだけで、地位も名誉も失うものも大きいため、密室で刑事に脅され、「関生に脅されてやりました」という供述調書を作られました。次に関生の組合員を逮捕しだしたわけです。この経営者は認めているから、判決も出ています。執行猶予が付いて終わっています。ええかっこを言う訳ではありませんが、経営者を恨んだりはしません。「警察と検察、裁判所が上手にやってきたんやなー」と思っています。でも、「その恐喝未遂て、なんやねん」という話ですが、これは、関生はコンプライアンス活動をやっているんです。例えば、「過積載のミキサーはあかんでしょ」「道路交通法をまもらなあかん」「現場を汚したらあかんでしょ」というものです。今、建設現場は、いろいろ労災防止なども含めて、ものすごく慎重にやっています。ただ、大手ゼネコンはあまり責任は取りません。みんな下請け、孫請けに責任を取らせるようなことをしています。そういったことは許されないということと、質の良い生コンを運ぶという経営者と共闘した取り組みがコンプライアンス活動です。「協同組合」に入っていない生コン屋さん、アウトサイダーは、1000円、2000円安くして売ります。安くすると、早く降ろすために水を入れるわけです。「加水」と言うんです。効率を考えて、「シャーッ」と流れるようにする。でも、それをやると品質が悪くなります。また、安くすると、本来は川砂が良いんですが、海砂を使うことになります。海砂は、塩分が高いです。塩分を抜かなければならないが、コストが高くなる。結局、塩分も抜かずに使う。それで何が起きるかというと、1995年に「阪神・淡路大震災」が起きて、高速道路の橋脚が倒れました。耐用年数が来ないのに倒れた。何故そうなったのか。関生と社会党の議員さんと千葉の工業大学のコンクリート工学の権威を持った小林一輔さんとで一緒に調査に行きました。そしたら、中の鉄筋が錆びていたんです。鉄筋が錆びるということは、必要以上の水を入れた「加水」と、塩分が高い骨材を使っていたということです。中の鉄筋が膨張するんです。橋脚の中から亀裂が入っていたということです。それで、大きな地震が来て倒れたんです。これは、小林さんが出している本があるんで、もし良ければ参考にしてもらったら間違いないです。そういうことがあったんで、われわれは、構造的に生コン業者はゼネコンからダンピングされると、悪い生コンを作らざるを得ない、だから、適正な価格を払えと中小企業と協力してやっていこうという運動だったんです。

 

滋賀県警は、組織犯罪対策課、つまり暴力団担当の課です

 

 滋賀の話に戻りますが、その運動が「協同組合の生コンはアウトサイダーより高いかもしれないけれど、品質は良いんだ」がセールスポイントでやっているわけです。そのことが「労働組合と協力して、ゼネコンに対して、脅してモノを取りにいった。それが恐喝未遂」にされたんです。その流れで、「大和ハウス」のグループの「フジタ」というゼネコンにビラを撒いたんです。「生コンの品質に問題があるかもしれない。建設現場の法令順守をしていない」という内容のビラを撒いたことが「威力業務妨害」といって、逮捕されたんです。よく「ビラ撒いただけで逮捕された」という話は、関生だけでなく、いろんな所であるかもしれませんが。そういった異常なやり方です。滋賀県警の異常なやり方は、同じ事件で何回もこま切れに逮捕するんです。普通だったら、同じ事件で「ビラを撒いた時に武谷が居た。武谷が指示したんだな。武谷が現場に行ったんだな」ということであれば、1回に20人を逮捕すれば良いのに、10人逮捕したり、次に6人逮捕したり、2ヵ月後にまた8人逮捕したりとかしています。これは、保釈を認めさせない、要は、社会不在にさせるだけのやり方をモロにやっているんだなと思います。「警戒が必要だ」と弁護団も言っています。

 大阪府警は、しょっちゅう事務所にガサに来ています。大阪の弾圧は、警備部がやっています。公安警備と言ったが分かりやすいでしょうか。大阪府警は、なかなか紳士的です。ところが滋賀県警は、組織犯罪対策課、つまり暴力団担当の課です。ガサなどに来た時、私たちは撮影をしますが、その撮影したものを取り上げたりとか、携帯電話を取り上げたりとか、ムチャクチャです。その刑事たちはすごい格好をしています。「そんなベルト、どこに売ってるねん」みたいなキンキラ金のワニの皮のベルトだったり、後ろに「旭日旗」を張っていたり、めがねも色の着いた独特のものです。滋賀県警、大津地検、裁判所とありますが、一番悪いのは裁判所です。裁判所が逮捕状や家宅捜索令状に判子を押すんですから。裁判所がそういうことを認めているということについて、今、弁護団とともに反撃をしています。

 日本は産別運動を認めない。イタリアとか、フランスとかイギリスとかドイツであれば、産別運動を認めている。労働組合のないところがストライキしても、その一社が抜け駆けをすることによって、全体に影響を及ぼすから合法だよというのが普通じゃないですか。ところが、生コン産業でそういうことをやっても、「何やっとんねん関生は、労働組合がないところにストライキかけたら、犯罪やないか」と裁判所が認めるということもあります。でも、先ほどの決意表明の中でもありましたが、ストライキをしないことには経営者は何も言うことを聞かないし、痛みをうけません。私は、「ストライキ、威力業務妨害、上等やんけ」と思います。「業務妨害」するから、相手に脅威を与えるわけで、それで労働組合の正当な根拠のある要求を呑むというのが日本の労働組合の、私たちの先輩たちの闘いだったと思います。ところが今、ストライキをする労働組合がない。関生の役員の取り調べで、ある警察官が言ったらしいです。「お前のところ、ストライキのやり過ぎなんや」と。「いまどき、何がストライキやねん」「どこがストライキやっているんや」「お前ら前近代的や」と言われたらしいです。権力はそういうふうに見ていて、警察は「今、関生に対してこれだけの弾圧をやっても、大したことにならへん」と言っているらしいです。これがアメリカとかフランス、イギリスだったら、問題になるかもしれないけど、日本では「『こんなもん犯罪集団や』と言うたらええんや」とサンケイ新聞を使ってどんどん発信したら良いんだという話です。なんかこう、田んぼの煙突みたいになっているんです。熊沢誠さんが大阪の集会に来てくれまして、「関生がまっとうな労働運動をやっているからや。まっとうな労働組合だから弾圧を受けるんや。弾圧を受けることを誇りに思ったらええ」と言ってくれました。

毎週土曜日、滋賀県警と大阪府警に対する抗議行動が闘われている
毎週土曜日、滋賀県警と大阪府警に対する抗議行動が闘われている

私たちが一番問題にしているのは、「警察国家作り」です

 

 私たちが一番問題にしているのは、「警察国家作り」です。関生は、沖縄の辺野古や高江に2人の専従にずっと行ってもらい、高江では「土人発言」をした大阪府警ともめて、逮捕されたり、辺野古ではカヌーに乗って現地の仲間と一緒に闘っています。3年前には、「絶対『共謀罪』許さんぞ」と関西各地で街頭ビラまきをやり、反対の声を上げました。反原発の仲間とも連絡して「原発なくせ」と闘ってきました。日々雇用、「非正規」が多いなかで、「イージス・アショア」とか、何百億、何千億もするステルス戦闘機・F35とか、アメリカに媚売って買う前に、他に使うことあるやろという運動をやっていたこともあって、弾圧が来たのかなと思います。今度、大阪でサミットが開かれる、万博がある。その後に、カジノを作ろうとしている。そういった背景で、ストライキを闘ったり、大衆行動を闘う労働組合は、見せしめ的に「潰してまえ」ということもあるのかなと思っています。皆さんのご支援と、弁護団の連携によって、3月14日までに20人が勾留されていましたが、10人が保釈されました。これは皆さんのおかげでありがたいことです。残りの10人を早く奪還するために、今後も闘いを続けて行きたいと思います。具体的に何をするかというと、滋賀県警、大津地検、大津地裁の異常なやり方をどんどん広報していきますので、皆さんも是非ご協力してください。それと、われわれの運動の正当性をしっかり訴えていこう。さっき紹介した「阪神・淡路大震災」の時の不良生コン。何も関生の組合員だけ良くなったらいいんだよということではなく、公共的な運動をやっているんだということを発信していこう。それと、闘う労働組合との共闘をドンドン進めていこう。特に、韓国の民主労総を含めた国際連帯ですね。それと、弁護団は頑張ってくれているんですが、今の「戦争できる国」を作ろうとする動きの中で、弁護団も限界があると思います。最終的には、大衆行動で決着をつけるように意思統一をしています。計画したことをしっかり実践する。そして、何より組織拡大です。先ほども言われていた個人加盟ユニオン、一人一人組織していこう。当然、数を増やすと質も高めていかなければなりませんから、しっかり学習をしてこうとしています。労働組合の任務である経済闘争、2019年春闘で大幅賃上げを獲得して今の権力弾圧を終わらせる。それと、思想闘争。今のマスコミ、SNSなどに惑わされず、しっかり物事の本質を見極め、力をつけよう。そして、政治闘争です。2010年にも、生コン価格を上げるために、4ヵ月半、ストライキをしました。ゼネコンの現場を4ヵ月半止めました。JR大阪駅の再開発の工事に4ヵ月半、生コンが入らなかったんです。その時はニュースにも出て、新聞にも出ました。この時は弾圧が無かったんです。誰一人逮捕もされていません。呼び出しもガサもありませんでした。この時は、民主党政権だったんです。民主党だったから良かったわけではないですが、やはり政治闘争は大事だなと思いました。統一地方選があり、参院選があり、政党がどうこうではなく、弱者の声を国会に上げていくために頑張って行きたいと思います。経済闘争、思想闘争、政治闘争の三位一体と大衆行動でこの弾圧を終わらせるために闘いますので、今後とも皆さんご支援よろしくお願いします。どうもありがとうございました。

 

〈質疑応答〉

 

:「裁判に対して黒服の者たちが大量に押しかけているという話を聞いたのですが、これは山口組の系列の人なのでしょうか?」

 

:「裁判の傍聴に来ている奴は、山口組です。フロント企業の連中です。あいつらも仕事が無くなるから。山口組も三つに分かれています。東京と違って、関西の生コン会社はヤクザ企業が多いんです。私も『大阪広域協組』の拡大のために生コン会社に行くんですが、最初は『協同組合なんて』と言っていた連中が、生コン価格が上がったから、今では『入っていて良かった』と言っています。」

 

:「関西生コン労組にとって、資本に当たる者は、何になるんでしょうか?」

 

A:「資本はセメントメーカーです。旧財閥のセメントメーカーと対決しています。セメントメーカーは、関生支部を絶対に認めません。生コン企業は中小零細企業で、春闘などでは対立するんですが、セメントメーカーと大手ゼネコンの収奪を受けています。それを許さない闘いには、協力するという関係です。ただ、資本家は、利益があがったら裏切ります。三回裏切られています。」

 

:「さっきの山口組の系列は、何のために裁判の傍聴に来るんですか?」

 

A:「それは、嫌がらせで来てるんです。裁判がある時に、私たちが拘置所からジャージやスエットみたいなみすぼらしい服を着て出廷するのを『見に行け』と号令がかけられているようです。『大阪広域協組』の4人の執行部、恐怖支配をしている『4人組』の奴らが、無理やり裁判の傍聴に動員をかけているんです。そいつの号令で裁判の傍聴に行かなかったら、いじめられるんです。だから、嫌々来てるんです。来てる連中の中には、山口組系で、『ワシ、山健組の中田さんと同級生やねん』と、暗に兄弟分だと言いたいんでしょう。『ヤクザの親分から年賀状が来てるねん』と見せてくることもありました。そいつらが『大阪広域協組』の執行部をやっているんです。いつの時代も一緒ですが、特に建設業界は、暴力団を背景にして、自分を大きく見せて、言うことを聞かせようとします。多分、一人だったら、何もできないでしょう。」