3・25 全国寄せ場・日雇い労働者 対厚生労働省団交、対日本経団連・日本建設業連合会(日建連)追及―弾劾行動
全国寄せ場交流会
元請けゼネコン・「日建連」に「現場から排除するな!」「沖縄の新基地建設に加担するな!」と迫る
「城北労働・福祉センター」(センター)前で決起集会をやりぬいた全国寄せ場交流会の仲間たちは、午前8時半、「日建連」が入る八丁堀の「東京建設会館」前に集結し、闘いの決意を込めたシュプレヒコールをあげる。警視庁の公安デカが周辺に張り付き、弾圧の機会を窺っているが、闘いの決意に燃えた労働者の気迫に圧され、何も手出しはできない。
元請けゼネコン団体=「日建連」に対しては、(一)「『建設キャリアアップシステム』によって、日雇い労働者を建設現場から排除するな」(二)「戦争国家作りのための基地建設に加担するな」の二点をめぐって追及が行なわれた。
「『建設キャリアアップシステム』によって、日雇い労働者を建設現場から排除するな」
昨年4月から、建設現場で働く労働者の技能や、現場での作業内容を毎日記録し、IDカードに情報を蓄積する「建設キャリアアップシステム」が始まっている。「日建連」は、2023年4月からIDカードを持つ労働者しか現場に入れない体制を作ると宣言している。これは、「社会保険(健康保険、年金、雇用保険)に加入していない労働者の現場入場を認めない」という攻撃に続いて、さらに寄せ場・日雇い労働者を現場から排除するものだ。この「建設キャリアアップシステム」について、日建連の常務執行役員・河井は、「これは、建設労働者の処遇改善のためのシステムですから、皆さんにとってマイナスにはならないと思います」なぞと自慢げに言う。交渉団はこれに対して、「アパートも借りられず、住民登録もできず、IDカードに入力する住所も書けない日雇い労働者はどうなるんだ」と追及する。これに対して河井は、「『住民登録ができない労働者が、建設業者の飯場の住所を書いてもいいのか』という質問であれば、IDカードの発行主体である『建設業振興基金』に伝えることはできます」なぞと、まったく責任を取る気がない姿勢を露骨に示してくる。続いて、交渉団は、昨年の追及行動で行なった「元請けゼネコンが日雇い労働者が社会保険に加入するための基金を作れ」という要求に対する「日建連」内部での検討結果を明らかにせよと迫った。「日建連」の常務執行役員・河井は、「一つのアイデアだとは思いますが、『日建連』から国土交通省や厚生労働省に提案するのは難しいという判断です」なぞと平然と言ってくる。その理由を問い質すと、「社会保険料は、賃金の中から支払うのが基本となっているから」なぞと答えてくる。交渉団からは、「保険料を払えない賃金しか払わずに日雇い労働者を使っている責任を取れと言っているんだ」と怒りの声が上がる。さらに、「業者によっては、労働者に飯場で住民登録させ、国民健康保険と国民年金への加入書類を作らせ、保険料は払わないまま、現場に入れている業者もいる。要するに書類だけのアリバイ作りだ。『日建連』は、それを知っていて、黙認するのか」と追及する。これに対して、河井は、「自分たちには保険料の支払い状況をチェックする権限はありませんから」と、これまた責任逃れの弁を繰り返す。「建設労働者の社会保険への加入率を高める」なぞという元請けゼネコンの〝綺麗ごと〟は、多重下請け構造の下で、何重ものピンハネを強いられる寄せ場―日雇い労働者のことなど眼中にないのだ。
「戦争国家作りのための基地建設に加担するな」
最後に交渉団は、沖縄・名護新基地建設に手を染めるゼネコンを追及した。河井は、「いろんな意見があることは承知しています。『日建連』としては、受注する各企業における判断に任せるということになります」なぞと答えてくる。交渉団は、「辺野古の基地は海兵隊の基地であり、明らかな軍事基地だ。それでも『日建連』加盟企業が受注すれば、『それで良いんだ』ということか」と追及する。河井は、「『日建連』には明確な行動規範があるわけではありませんから」と逃げを打つ。交渉団は、「行動規範を作れ。『戦争に協力するような工事は受注しない』という行動規範を作るつもりはないのか」と畳みかける。河井は、「いろんな考え方がありますから」という回答でごまかす。交渉団は、「『日建連』は、憲法に反しても利益になるなら仕事を取るんだな」と怒りの声を叩きつける。
交渉団は、約30分にわたって「日建連」を追及した。そして、「東京建設会館」前でビラまきとシュプレヒコールをあげている仲間と合流し、追及の報告を行なう。遅れて合流した「反戦・反失業を闘う釜ヶ崎労働者の会」からの決意を受け、結集した労働者は、日雇い労働者の現場からの排除を進め、戦争協力の国策企業へと純化する元請けゼネコンを追及する闘いをさらに強めることを全員で確認し、日建連追及の締めくくりとして、再度シュプレヒコールを叩きつけていった。
「アブレ金の手帳を奪うな」「失業対策の仕事を出せ」「『働き方改革』許さん」と厚生労働省を追及
寄せ場春闘集中行動の次の相手は、厚生労働省だ。
午前11時からの団体交渉を前にして、部隊全員で交渉議題の確認を行なう。議題は、(1)「『日雇雇用保険』の権利を奪うな。『日雇雇用保険』の手帳の発行、更新について、すべての職安に分かりやすい掲示を行なえ」(2)「『働いて生きて行きたい』という日雇い・野宿労働者の声にこたえろ」(3)「企業の利益拡大のために労働者を犠牲にする『働き方改革』をやめろ。『同一労働同一賃金』が、日雇い労働者にどのように適用されるのか、明らかにせよ」である。
(1)~(3)の議題に対して、厚生労働省は、職業安定局雇用保険課、職業安定局就労支援室、雇用環境・均等局有期・短時間労働課の担当者3人が対応した。これらの担当者を相手にした団体交渉は、それぞれの議題についての担当者が行なった回答に対する質問、追及から開始された。
「『日雇雇用保険』の権利を奪うな。『日雇雇用保険』の手帳の発行、更新について、すべての職安に分かりやすい掲示を行なえ」
厚生労働省が公表している最新の「雇用保険事業年報」(2017年版)によれば、「日雇労働被保険者数」は、2016年の1万3000人から2017年の7500人へと、4割超も減っている。これは、不正受給を理由にして、手帳の更新や新規発行の条件を厳しくしているからだ。日々雇用の寄せ場―日雇い労働者にとって、「アブレ金」は、生活保障の要素をもっている。その「アブレ金」を受給するための手帳を更新できなかったり、新規発行ができないということは、野垂れ死にに直結する問題だ。
交渉団は、雇用保険課の「(「手帳発行についての掲示を行なえ」という)強い要望があったことは伝えます」なぞという形ばかりの回答を許さず、追及を開始する。「玉姫職安で『輪番』の仕事に就くために『求職受付票』(段ボール手帳)の発行を申請すると、『上野職安で求職票を作ってきて下さい』と言っている。野宿する労働者は住所が書けず、『求職票』を発行してもらえない。結局、『求職票』の発行を条件にして『求職受付票』の発行拒否がやられている。雇用保険の仕組みを詳しくしらない労働者を就労させないようにしている。どうするんだ」という追及の声が上がる。「アブレ金」を受給するための手帳を奪うだけでなく、就労するための「求職受付票」さえ発行拒否する職安の実態に怒りの声が上がる。担当者は、「初めて聞きました。現場に問い合わせして、確認します」と答えるしかない。
「『働いて生きて行きたい』という日雇い・野宿労働者の声にこたえろ」
続いて、交渉団は、公的就労対策の実施をめぐって追及した。就労支援室の担当は、「民間で安定的に就労されることを目指しています」「就労支援や生活保護などの支援策を受けてください」と繰り返す。これに対して交渉団からは、「就労支援があることを野宿している労働者は知らない。知っても、日雇いや飯場暮らしが長かった労働者にとっては、ハードルが高い。だから、野宿していても就労でき、その収入で野宿せずにすむ公的就労対策事業をやれと言っているんだ」と怒りの声が飛ぶ。さらに、「生活保護といっても、団体生活に行かされる。団体生活が合わずに野宿に戻る労働者がいる。どうするんだ」という声が飛ぶ。担当者は、正当な怒りや要求を突き付けられ、顔を真っ赤にして、それでも「民間での就労を基本にしていますから、国直轄の事業は・・・」と、テープレコーダーのように繰り返すだけだ。交渉団は、「結局、役所の用意したコースに乗れない労働者は、野垂れ死ねということか」と弾劾の声を叩きつけた。
「企業の利益拡大のために労働者を犠牲にする『働き方改革』をやめろ。『同一労働同一賃金』が、日雇い労働者にどのように適用されるのか、明らかにせよ」
三番目の追及は、「働き方改革」をめぐってだ。越年・越冬闘争の最終日に東京・山日労が取り組んだ団体交渉で、厚生労働省の担当者は、「日雇い労働者にも『同一労働同一賃金』が適用されます」なぞと自慢げに言っていた。これをめぐって、交渉団は追及した。有期・短時間労働課の担当は、「日雇い労働者の方は、『有期・短時間労働者』に該当し、来年4月から『同一労働同一賃金』にもとづいて、『有期・短時間労働者』であることを理由にして『不合理な待遇差』を受けないようになります。『不合理な待遇差』があった場合は是正を求めることができます」なぞと抽象的な回答で済ませようとする。これに対して交渉団からは、「『不合理な待遇差』の基準はあるのか?」と当然の質問をする。これに対する回答は、「それは裁判所が判断することになります」というものだ。「同じ現場で同じ仕事をしていて、自分の賃金が低かったら、裁判所に訴えろということか。そんな手間ひまをかけないとダメなもの、『絵に描いた餅』だ」という批判の声が飛ぶ。これに対して担当者は、「裁判でなくても、労働局を通して、企業に『待遇差』の理由の説明を求めることができます」なぞとマニュアル通りの回答を行なう。交渉団からは、「賃金が低い理由の説明を受けて、何になるんだ。そもそも、説明を求めたら、首を切られるだけだ」と就労現場の実態に基づいて批判する。これに対して担当は性懲りもなく、またもやマニュアルに沿って「説明を求めたことで、解雇や降格などがあった場合は『不利益取扱い』になります」なぞと回答する。交渉団からは、「首を切られた後に、『不利益取扱い』と認定されて、どうやって飯を食っていけと言うんだ」という反論が即座に飛ぶ。「同一労働同一賃金」のデタラメさの極めつけは、担当者が「同じ事業所に雇われている労働者の間の待遇差をなくすためです」と説明したことだ。同じ現場で、同じ仕事をしていても、元請けの社員、一次下請けの社員、二次、三次、四次の多重下請けの最底辺の日雇い労働者は、同じ最底辺の業者に雇用されている労働者との「待遇差」しか「問題」にできないということだ。それがわかると、交渉団からは、「『元請けや一次下請けの労働者より賃金が低くても文句を言うな』ということか。何が『同一労働同一賃金』だ」と一斉に非難と怒りの声が上げる。「働き方改革」が「売り」にしている「同一労働同一賃金」の本質の一端が寄せ場・日雇い労働者の追及によってあらわになった。それは、「正規」雇用―「非正規」雇用の違いがある限り、「待遇差」は「合理的」とされ、「非正規雇用」労働者の低賃金や無権利状態は「合理的」とされるということだ。
1時間以上にわたる追及を貫徹した交渉団は、「アブレ金」の権利を奪う攻撃を許さず、「失業対策の仕事」を必ずかちとり、「働き方改革」を粉砕する決意を固め、厚生労働省との団体交渉を終えていった。
日本経団連に「『働き方改革』粉砕!」「『戦争国家』作りに加担するな!」と弾劾を叩きつける
寄せ場春闘集中行動の最後の相手は日本経団連だ。日本経団連は、2019年春闘に対して、「経労委報告」で「『働き方改革』の目的は、生産性向上だ」「賃上げの率よりも、生産性向上のための賃金制度を作るべきだ」と「成果主義賃金」の導入を煽動している。これは、労働者が団結して、生活に根ざした賃金要求を行ない、統一した賃上げをかちとることを否定する賃金闘争つぶしの宣言に他ならない。賃金闘争を否定するということは、労働組合運動そのものを否定するということであり、政府の言いなり、資本家の言いなりの組織にするということだ。それは、日本労働運動を、戦前の「産業報国会」のように、「お国のため」「戦争のため」と戦争に協力していった「翼賛労働運動」に転落させようとする攻撃だ。大手町の経団連会館前を制圧した部隊は、ただちに怒りのシュプレヒコールを叩きつける。
続いて、用意した抗議文を読み上げる。「安倍や日本経団連が進めようとしている『働き方改革』は、『残業代ゼロ化』や『1ヵ月100時間残業』の合法化に見られるように、労働者に『過労死するまで働け』と強制する攻撃だ。『同一労働同一賃金』も、正社員の賃下げをするためのものだ。『非正規』社員にわずかばかりの手当てを支給し、『生涯非正規』で、安い給料と無保障で働けという攻撃だ。われわれ日雇い労働者や『非正規』労働者を、『いつでも首が切れる便利な労働力』として利用し、使い捨てにするのが、『働き方改革』の目的だ。われわれは、アブレ―野垂れ死に攻撃と対決してきた団結の力で、このような攻撃を木っ端微塵に粉砕する。われわれ、全国の寄せ場・日雇労働者は、自らの生存をかけて、全国5000万労働者の先頭に起ち、『仕事をよこせ!』『生活できる賃金よこせ!』という怒りの声を日本経団連に叩きつける! われわれは、『反戦・仕事よこせ』を闘い、寄せ場春闘を断固闘いぬく! 日本経団連は、日雇い・野宿労働者の怒りの声を聞け!アブレ―野垂れ死に攻撃を粉砕するぞ!」。
抗議文を読み上げた代表の仲間を先頭に、全国寄せ場交流会の部隊は、経団連会館の正面玄関に押し寄せる。「日本経団連は、俺たちの声を聞け」「2019年春闘を闘うぞ」というシュプレヒコールを叩きつけ、日本経団連を弾劾する闘いをやりぬいた。
早朝からの寄せ場春闘集中行動をやりぬいた全国寄せ場交流会の部隊は、経団連会館近くの公園で集約集会をもち、「元請けゼネコン、厚生労働省、日本経団連に対する闘いをやりぬいた団結で、さらに各地区・各寄せ場での『反戦・反失業』の闘いを前進させよう」という集約提起を全員の「ヨシ!」の声で確認した。締めくくりに東京・山日労の仲間の音頭で「団結ガンバロー」を三唱し、この日の闘いを終えていった。