12・28―1・6
「黙って野垂れ死ぬな! 生きてやりかえそう!」越年・越冬闘争をやりぬく
東京・山谷日雇労働組合
「野垂れ死に攻撃許さん」の決意のもと、山谷労働者が越冬実に結集
2019―2020年山谷越年・越冬闘争は、寄せ場労働運動の原点を指し示す「黙って野垂れ死ぬな!」「生きてやり返そう!」を合言葉に、玉姫公園を実力占拠して闘われた。12月28日から1月6日までの9泊10〇日に及ぶ越年・越冬闘争では、野宿で年を越さねばならない労働者を玉姫公園に迎え入れ、3000食近い炊き出し、毎夜の人民パトロール、衣類配布など、凍死・餓死の危機に直面する労働者を防衛する取り組みとともに、ワッショイ・デモが浅草警察の機動隊の阻止線を押しまくって闘われ、最終日の1月6日には、寄せ場労働者、野宿労働者への野垂れ死に攻撃に加担する東京都山谷対策係への追及行動、厚生労働省との団体交渉が闘われた。
山谷では、業者や手配師による路上求人がほとんどなくなり、「城北労働・福祉センター(センター)」や玉姫職安でわずか一人か二人しか民間求人がない状況になっている。その民間求人では、「年金、健康保険への加入」「携帯電話の所持」などを条件にして雇用する業者が増え、山谷労働者の就労機会が減少している。多くの労働者は、東京都が実施している「特別就労対策事業(通称・「輪番」)」に二週間に一回程度就労し、唯一の収入を得ている。センターは、仕事紹介を受けるためにカードの発行を申請する労働者に、「1ヵ月分のドヤの宿泊証明を持って来い」「1月に15上民間で働いている証明を持って来い」なぞと言ってカードの発行を拒否し、仕事紹介からの排除を繰り返している。また、「東京オリンピック・パラリンピック」開催を契機にしたドヤ街の再開発が進み、徐々にドヤの廃業―マンションなどへの建て替えが進んでいる。10月には、台風19号が関東を直撃している時、台東区役所が開設した避難所から野宿する労働者の排除を行なった。寄せ場―日雇い労働者に対するアブレ―野垂れ死に攻撃は、ますます強まるばかりだ。
東京・山谷日雇労働組合(東京・山日労)は、こうした攻撃を許さず、東京都や厚労省に対する「仕事よこせ」の闘いを闘っている。東京都は、今年度まで5万1000人分としていた「輪番」の予算や人工数の削減を狙っている。東京・山日労は、10月に東京都との団体交渉を闘い、「来年度の『輪番』の計画を明らかにしろ」「『輪番』の予算をもっと増やせ」と追及した。
このような資本と行政による野垂れ死に攻撃の中、野宿で年を越さねばならない労働者が、玉姫公園にたどり着いている。東京・山日労は、野垂れ死に攻撃をはね返し、団結してやりかえすべく、越年・越冬闘争に取り組んだ。東京・山日労が呼びかけた越冬闘争実行委員会(越冬実)には、山谷労働者、支援の労働者が多数結集した。また、寄せ場・山谷からあらゆる領域の闘いとの結合を追求し、寄せ場・日雇い労働運動への支援を訴えてきた東京・山日労には、圧倒的な共感とともに資金、食材、衣類のカンパが寄せられた。東京・山日労と越冬実は、この共感と期待に応えるべく、「仲間の命は俺たちの団結の力で守りぬく」「アブレ―野垂れ死にを強制する奴らにやりかえす」という決意で、9泊10日に及ぶ拠点越冬を、公安警察、右翼ファシストの敵対を封殺し、貫徹した。
12月28日、越年・越冬闘争に突入
山谷越年・越冬闘争の初日は、12月28日午前8時から、玉姫公園を10日間の拠点にするための作業から始まった。玉姫公園には、時間がかかる大屋根などの設営のために、25日から資材搬入などの作業を担ってきた労働者が待機している。勢ぞろいした労働者は、打ち合わせを済ませ、それぞれの準備作業に取り掛かる。
午後6時からいよいよ越年・越冬闘争初日の炊き出しだ。初日のメニューであるカレーライスが配食され、受け取った労働者は二台の大型ストーブで暖かくされた大屋根の中で食事を始める。
午後7時からは、越年・越冬闘争突入集会だ。最初に、越年・越冬闘争を闘う「反戦・反失業を闘う釜ヶ崎労働者の会」、福岡・築港日雇労働組合、沖縄・首里日雇労働組合からの連帯メッセージが紹介される。「釜ヶ崎労働者の会」は、「12月28日から1月5日まで、カイロ、おにぎりなどをもって、夜回り・人民パトロールを行なう」「越年・越冬闘争をやりぬき、寄せ場解体を見すえた『センター機能縮小』攻撃を許さず、『反戦・反失業』を闘う労働者の団結を打ち固め、『関西地区生コン支部』への大弾圧粉砕を闘い、2020年の闘いに撃って出る決意です」。福日労は、「福日労も、12月31日から1月2日まで、須崎公園での『福岡日雇い越年・越冬闘争』を取り組みます」「安倍は、改憲と戦争国家体制を作り上げるために、労働組合運動をつぶす攻撃を強めています」「これを許さず、越年・越冬闘争で労働者の団結をさらに強める決意です」。沖日労は、「名護新基地建設の埋め立て工事が連日にわたって続けられています。しかし、沖縄労働者人民の闘いは不屈です。追いつめられているのは、政府―沖縄防衛局の側です」「沖日労は、12月31日から1月2日まで、越年・越冬闘争を取り組みます。そこで培った団結の力で、新基地建設阻止闘争をはじめ、反戦・反失業闘争に撃って出る決意です」。
続いて、東京・山日労が越年・越冬闘争の基調を提起する。「山谷では民間求人が激減し、多くの山谷労働者は、『アブレ―野垂れ死に』にさらされており、東京都は、特別就労対策事業の削減を策動している。日雇い労働者を使い捨てにしてきた建設資本や、失業―野宿を強いてきた行政が、責任を放棄しわずかな就労の機会まで奪おうとする動きを許すことはできない」「『非正規雇用』で働き、首切りに遭い、新たに山谷に辿り着く労働者の動きも続いている。さらに、国土交通省と元請けゼネコンによる『社会保険(年金・健康保険)に未加入の労働者は建設現場に入場させない』という攻撃に加えて、『建設キャリアアップシステム』によって、寄せ場―日雇い労働者を就労から排除する動きも強まっている」「山谷越年・越冬闘争は、『正規』、『非正規』を問わず、すべての労働者と結びついて『やり返す闘い』を実現することを目指す。『反戦・反失業』を闘う山谷労働者の圧倒的な部隊を作り上げよう」「安倍政府は、朝鮮半島を戦場にする戦争への突撃を強め、改憲攻撃を激化させている。国家権力の弾圧、金町一家の敵対を粉砕し、玉姫公園を拠点として越年・越冬闘争を闘いぬこう」。玉姫公園には、飯場から出てきた労働者や、「貧困ビジネス」によって「食い物」にされてきた労働者がたどり着いている。東京・山日労と越冬実は、越年・越冬闘争の意義を再確認し、10日間の闘いの決意を固めた。
午後9時からは、山谷の「イロハ通り商店街」などで野宿する労働者の安否を確認し、食料やカイロなどを配布する人民パトロール(人パト)が取り組まれた。
「名護新基地建設阻止」「反戦・反失業」を闘う決意を打ち固める
二日目の12月29日には、越冬実の情宣ビラである『黙って野垂れ死ぬな』が出され、早朝開く玉姫公園沿いの「朝市」に来た労働者や、東京都が行なう越年対策の入寮受付の会場で並ぶ労働者などに配られ、「玉姫越冬」への合流が呼びかけられる。夕食後の企画では、「沖縄・辺野古での新基地建設を許すな」と題して、2015年制作の「戦場ぬ止み(いくさばぬとぅどぅみ)」が上映された。映像を観た労働者からは、新基地建設への怒りと、体を張って闘う沖縄労働者人民への共感の声が出された。
三日目の12月30日の夜には、「労働法改悪を許すな」と題して、長時間労働を強いられる労働現場で、闘いに起ち上がった青年労働者を描いたドキュメンタリー映画・「フツーの仕事がしたい」が上映された。「非正規職」労働者が置かれた過酷な現状と、そこから起ち上がる主人公の姿に自分を重ねた仲間たちは、スクリーンに見入った。
2019年の大晦日を迎えた玉姫公園では、恒例となった「東京大衆歌謡楽団」の無料出演によるコンサートが行なわれた。「東京大衆歌謡楽団」は、ビールなどの差し入れを持って玉姫公園に到着し、「ああ、上野駅」「東京ラプソディ」など、山谷労働者が口ずさんできた歌を一時間近く熱唱した。テントの中は50人以上の人で埋め尽くされ、ナツメロに聴き入った。28日の越冬突入から力を蓄えてきた仲間たちは、この越冬闘争で初めてのワッショイデモを力強く闘った。玉姫公園に労働者を封じ込めようとする浅草警察・機動隊の阻止線を打ち破るべく闘いぬいた。
年が明けて1月1日、玉姫公園では午前11時から「団結餅つき」が開催される。労働者がかわるがわる杵を手にし、8升のモチ米が短時間でつきあげられ、大根おろし、黄粉、あんこ等と一緒にふるまわれる。夜は、2020年の闘いにむけた総決起集会だ。午後7時から大屋根の下に全員が集合し、東京・山日労が、「安倍政府による、朝鮮半島での戦争突入にむけた軍備増強、戦時国家体制形成の総仕上げとして、改憲攻撃が強まっている。また、日雇い労働者、野宿する労働者を排除する動きが強まっているが、そんな攻撃を許してはならない。2020年も『反戦・反失業』を基調にした闘いを闘いぬこう。安倍政府を打ち倒そう。1・6対都庁行動、厚生労働省団交から闘いを始め、1・12日雇い労働者全国総決起集会とデモに決起しよう」と呼びかけ、全体で確認する。続いて、越冬実の炊事班、設営班が途中経過を報告し、最後までやりぬくと決意表明を行なった。全体の闘う決意を確認しあった後は、「団結乾杯」だ。全員が「東京大衆歌謡楽団」から差入れられた缶ビールや酒、ジュースが入ったコップをかかげ、2020年を闘う決意を込めて「乾杯」の声を上げた。
1月2日の夜の企画は、「山谷(やま)―やられたらやり返せ」の上映だ。山谷の先輩たちが金町一家と対決し、悪徳業者を追及して闘う姿に多くの労働者が見入る。一時間を超える映画だが、席を立つ者もなく、多くの仲間が山谷の闘いの歴史をわがものとして共有化していった。
1月3日午後からは、寄せられた大量の支援の衣類が配布される。長さが30メートルにも及ぶブルーシートに広げられた衣類の山から、多くの労働者が、お気に入りの冬物衣類を選び、手にした。夜の企画では、「ストライキで闘う『関西地区生コン支部』への弾圧を許すな」として、DVD・「関西の生コン業界で、いまなにがおきているのか」が上映された。「関西地区生コン支部」への弾圧を許さず、連帯して闘うことが確認された。
1月4日の午前中には、年末・年始を東京拘置所ですごす獄中の仲間への激励行動が取り組まれた。東京・山日労と越冬実は、宣伝カーで東京拘置所の外周を回り、マイクを使って失業や貧困が原因となって獄中に囚われている労働者に対して「弾圧に負けるな! ガンバロー!」と呼びかけていった。
1・6東京都山谷対策係を追及し、厚生労働省との団体交渉を闘う
1月5日、午後7時からは山谷越年・越冬闘争をしめくくる総括集会がかちとられた。
1月6日、東京都山谷対策係と厚生労働省への闘いに出かける仲間は、7時半には組合旗、ムシロ旗を先頭に玉姫公園を出発する。
都庁近くに到着した山谷労働者の部隊は、警視庁公安の妨害を許さず都庁庁舎まで気迫に満ちたワッショイデモで進撃する。都庁前では、福祉保健局生活部の山谷対策係に対して追及の闘いを行なう。「『東京オリンピック・パラリンピック』の影響で『輪番』の仕事が減らされたり、無くなったりすることを危惧している。2020年度の『輪番』の計画を明らかにせよ」「城北労働・福祉センターの『利用者カード』の発行条件を緩和しろ」。主要な要求は、この二点だ。これに対して、山谷対策係は、「来年度の予算は、3月の都議会で決定する。現時点では、何も答えられない」という答えを繰り返すのみだ。センターの「利用者カード発行拒否」についても、「センターの対応は適切と判断している」「皆さんの要望は関係部署に伝える」と判を押したような回答に終始した。30分にわたって弾劾―追及を闘った仲間たちは、怒りに満ちたシュプレヒコールを東京都に叩きつけ、厚生労働省へと移動した。
厚生労働省の正門に到着した東京・山日労と越冬実は、厚労省にシュプレヒコールを叩きつけ、全員が団体交渉の会場に入った。厚労省との団体交渉では、最初に、玉姫職安が「求職受付票」(段ボール手帳)の発行に際して不当な条件をつけていることを追及した。本来、「求職受付票」は、無条件で発行されなければならない。しかし、玉姫職安は、「先に上野職安で『求職票』を作ってからこちらに来てください」と言い、発行を留保している。野宿しているために住所がない、連絡先の電話をもっていない労働者は、職安の「求職票」を諦めざるを得ない。したがって、「求職受付票」も諦めざるを得ないのだ。これに対して、厚労省の担当者は、「そうした扱いは、やっていないと報告をうけている」とくり返す。実例を挙げて追及をした仲間は、「おれたちがウソをついているというのか!」とさらに追及する。厚労省の役人は、「そういう例があったなら、連絡をください」と言わざるを得なくなった。次に、追及したのは、公的就労事業の実施をめぐってだ。厚労省の担当者は、「(戦後直後から国が直轄して実施していた)『失業対策事業』は終了し、現在は、民間での就労を推進している。就労しやすくするために、様々な資格を得て欲しい。資格取得のための支援を行なっている」と民間への丸投げを吐露する。これに対して、仲間から、「〝民間の仕事に就くか、生活保護をとるかを選べ〟というのが国の姿勢だ。公的就労事業の実施をなぜ避ける」「いくら資格を得ても、採用するかどうかを決めるのは、民間の会社だ。何度も面接を受けたが、全然採用されない。国の責任で仕事を出せ」「このままでは、一生、生活保護から抜けることはできない」と怒りが叩きつけられる。最後の項目では、「働き方改革」と称した「金さえ払えば首切り自由化」をやめよと鋭く迫った。
一時間半にわたって交渉を闘いぬいた仲間たちは、「仕事よこせ」の闘いをさらに強めることを確認して厚生労働省を後にした。
10日間にわたる越年・越冬闘争をやりぬいた労働者は、「黙って野垂れ死ぬな!」「生きてやりかえそう!」という闘いを実践しぬいた自信を胸に、1・12日雇い労働者全国総決起集会の成功、2020年春闘勝利にむけた活動に入っている。玉姫公園で年を越した労働者は、新たな仕事探しや、生活保護の受給に向けて動き出し、東京・山日労が呼びかける「反戦・反失業」の闘いに結集している。